「SHOGUN」エミー賞受賞を喜ぶ人と抵抗ある人 日本人がアメリカで最多受賞した本当の理由
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 13時0分
今回の受賞で改めてドラマ「SHOGUN将軍」に興味を持った人は多いはず。スケールの大きい架空の世界を舞台に権力闘争を描く「ゲーム・オブ・スローンズ」や私利私欲にまみれた骨肉の後継者争いが売りの「メディア王~華麗なる一族」など過去のドラマ部門のエミー賞受賞作はもちろん傑作揃いです。ドラマ「SHOGUN将軍」も人間関係の描き方はこれらと負けず劣らずで、系譜をしっかりと継いでいます。
本物志向を意味する“オーセンティシティ”にこだわった作品でもあります。製作したウォルト・ディズニー・カンパニー傘下の「FX」会長のジョン・ランドグラフ氏から直接聞いた言葉からも裏付けることができます。「日本以外では知られていない歴史上の人物をモデルにした物語を世界中の視聴者に届けるために、これまでにないクオリティでオーセンティシティを追求したいと思った」と語っていました。
実現するために予算をかけていることは、ウォルト・ディズニー・カンパニー最高経営責任者のボブ・アイガーがエミー賞のレッドカーペットインタビュー時の発言から読み取れます。「予算は高めだったが、クリエイター陣の手腕を信じた」と言及していたのです。ハリウッドの高額予算のドラマは1話数十億円規模に上ることから、最低でも1話あたり20億~30億円、下手すると50億円規模だった可能性があります。
大きな投資になったことは間違いないでしょう。金額のうえでも賭けに出たと言えますが、全10話うち7割が日本語のハリウッド作品だったことこそリスキーだったのかもしれません。ボブ・アイガーがこれを認めています。「ほぼ日本語の作品というリスクをとった」とも発言していました。
リスクをとる。これは、今回のアメリカのエミー賞受賞作全体のキーワードにもなっていました。リミテッドシリーズ部門で3冠を獲ったNetflixオリジナルシリーズの「私のトナカイちゃん」に主演、脚本を手掛け、エグゼクティブプロデューサーも兼ねたリチャード・ガッドは「リスクを恐れず、勝ち取った」と受賞スピーチで力強く語っていました。ストーカーの話から自己愛を問うテーマに行き着く力作ゆえに納得できるものでした。
多様性もキーワードの時代
安定志向ではない作品が評価される傾向は、アメリカのドラマ界がある意味、新たなフェーズに入ったとも考えることができます。今から約10年前の2013年に配信オリジナルドラマがエミー賞で初めて受賞して以来、年々その数は増えています。今回の受賞作を見渡してもそのほとんどが配信オリジナル作品です。ドラマ「SHOGUN将軍」もしかりです。
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