台湾、第2のTSMC目指すベンチャーが群雄割拠 激変した資本・技術・市場の今を投資家が語る
東洋経済オンライン / 2024年9月25日 9時0分
このようにして、5年ほど前から台湾の人材、そしてアメリカや中国から戻ってきた帰国組によって、台湾ベンチャー産業には新たな活力が吹き込まれました。
シリコンバレーのベンチャー企業の成功、その最大のカギは巨大市場の存在にあります。魅力的なプロダクトを作ることさえできれば、現地には積極的な買い手がいる。ビッグテックやテック人材は新たな技術にオープンで、生産性を高めるプロダクトの導入に貪欲です。そして、シリコンバレーで成功できれば、英語という世界言語の優位を生かし、世界の英語圏に事業を横展開できます。
残念ながら、このルートは台湾ベンチャーが模倣できないものです。台湾市場の小ささだけではなく、台湾の大企業は新たな技術に対する支払い意欲が低いこともネックです。
加えて台湾で用いられている繁体字中国語の海外市場もきわめて小さい。というわけで、台湾ベンチャーは創業のDay1(初日)から海外市場をターゲットにすることになります。2010年の「西進中国」、2016年の東南アジアブームに続き、現在では「東進」、すなわち日本市場が台湾ベンチャーにとって最初の選択肢となっています。
最大の目的地が日本のなぜ?
なぜ日本なのか。第1に日本市場の大きさです。アジアでは中国に次ぐ経済規模を誇り、海外のベンチャーから見れば、日本語と日本の文化という障壁を克服することさえできれば、このマーケットで勝負できます。
第2に日本の文化と企業は台湾人にとってなじみがあります。東南アジアと比べても文化的には近いと言ってもいいでしょう。そして第3に日本側も必要としているという点です。
新型コロナウイルス流行はテックの重要性を再認識させる機会となりました。課題克服のためにはより多くのアイデアとソリューションが必要ですが、日本のテック人材だけでは手が回りません。日本企業には新たな技術で課題を克服しようという意欲が高まりました。台湾ベンチャーの力を借りたいというニーズがあるのです。
台湾ベンチャーの日本進出では、BtoB(法人向け)、BtoC(消費者向け)、いずれにも成功例があります。BtoBの代表的な成功例はエイピアです。2021年に東京証券取引所に上場しました。AIを活用した販促支援ツールを展開しています。台湾で起業し日本に上場、そして世界に販路を広げています。
車載バッテリーベンチャーのシン・モビリティ(Xing Mobility)はパナソニック台湾董事長と元テスラ・エンジニアが起業した企業です。クールな電気レーシングカーを作ることが最初の目標でしたが、その過程で生まれた液浸冷却バッテリーが評価され、建設機械や農業機械を中心に採用企業が増えています。同社は日本農機大手クボタの出資を獲得、提携によって多くの国際市場を目指しています。
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