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ダイソン「オーディオ参入」にストーリーはあるか 競争が激化する中で新規参入を決めた意図とは

東洋経済オンライン / 2024年9月26日 8時0分

この製品は、イヤーカップのカバーや、イヤーパッドのカラーバリエーションを多数用意することで、本体そのものの仕上げの違いを含め、個性豊かな多様なルックスを自分自身で選び、作り上げることを特徴としている。

しかし、それは個性を表現するうえでは重要ではあるが、高級オーディオ機器として第一に求められることかといえば疑問が残る。 そう、ここでやはりなぜダイソンがヘッドフォンを作るのかというストーリーに中断が起きてしまうのだ。

誰もが知っているように、高級なヘッドフォンに求めるのは素晴らしい音質体験だ。もし機能的に性能の良いノイズキャンセリングヘッドフォンが欲しいだけであれば、もっと安価な選択肢がある。また機能を求めるのであれば、その機能が満たされる範囲内でより少ない投資のほうが望ましい。

つまり、高級ヘッドフォンに求められるのは機能ではなく満足感。そして満足感を埋めるのは主に音質ということだ。その中には当然装着感やバッテリーの持続時間なども含まれるため、そうした面での妥協はない点に関しては体験が素晴らしいとはいえるだろう。しかし、あくまでもそれは主役ではない。

思いの丈を話し続けていても前に進まないのであるが、OnTracの性能は優れたものであるが、非凡なものではない。また採用されているドライバーユニットや、ノイズキャンセリングの技術、そして装着感を高めているイヤーパッドやヘッドバンドのデザインなども含め、ほとんどはDyson Zoneと共通している。

つまり、(ダイソン自身は否定するかもしれないが)OnTracとはDyson Zoneから空気清浄機を取り除き、カラーバリエーションの自由度を広げる工夫をした製品である。

音質の面でも、両者の共通性は極めて高い。若干、周波数特性の調整を行っているようで、エネルギーバランスが異なると感じる部分もあるが、基本的なキャラクターはほとんど変わっていない。

誤解のないように加えておくと、決して音質が悪いと言っているのではない。 深みのあるサブベースから繊細な高音まで、あらゆる音を素直に再現するチューニングは、特にフラットな周波数特性に設定したときには、極めてモニター的で音楽ソースに込められている、細かなニュアンスの違いが克明に感じられる。

高性能バッテリーは商品開発の賜物

最大55時間という長時間駆動を実現し、急速充電機能により15分の充電で6時間の使用が可能なバッテリー性能は、空気清浄機だったDyson Zone向けに努力した開発者の成果を活かしたものといえるだろう。

OnTracの発売はDyson Zoneの登場時から予想されていたものだ。 日本での発売時、ジェイク・ダイソン氏に「シンプルにヘッドフォンに絞った製品に参入する意図はあるか?」と尋ねると明確には否定しなかった。

あれから1年以上。新しいストーリーが生み出されていないことに今回は驚かされた。

本田 雅一:ITジャーナリスト

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