KKRとベイン、富士ソフト買収で飛び交う奇手奇策 会社の頭越しに、前代未聞の手法を駆使
東洋経済オンライン / 2024年9月26日 8時0分
システム開発会社の富士ソフトをめぐる買収合戦が混沌としてきた。投資ファンドのKKRがTOB(株式公開買い付け)を進める最中、同じく投資ファンドのベインキャピタルが対抗提案を行う旨のプレスリリースを公表。待ったをかけられたKKRは、ベインがTOBに着手する前に大株主から株式を引き取る「2段階TOB」へと舵を切った。会社の頭越しに奇手奇策が飛び交う買収劇は、いまだ着地点が見えない。
ベインへの言及「100回」
「どの程度信憑性があるものかが明確でない」「(株主が)合理的な意思決定を行うことが阻害される懸念が生じている」
9月19日、KKRが関東財務局に届け出た訂正公開買付届出書は目を引くものだった。買収対象でもないのに、「ベインキャピタル」という社名が100回以上も登場するためだ。随所に滲むのは、横槍を入れたベインの糾弾だ。
およそ2週間前の9月3日、ベインは富士ソフトに法的拘束力のある買収提案を行う予定だと明らかにした。富士ソフトの入札はすでに締め切られ、内定したKKRがTOBの準備を進めていた。ベインは「アクティビスト(モノ言う株主)主導の非公開化だ」として距離を置いた結果、入札参加の機会を与えられなかったと反発。会社側の賛同などを条件に、KKRの買い付け価格である8800円を5%程度上回る水準で、10月にも対抗提案を行うと宣言した。
富士ソフトの株価は瞬く間に反応し、翌4日には9500円を突破した。KKRも買い付け価格を引き上げざるを得ないだろうとみた、投資家の思惑買いだ。
株価が買い付け価格を上回る中では、TOBの成立に暗雲が垂れ込める。このまま押し通すのか、買い付け価格を引き上げるのか。次の一手に注目が集まる中、KKRが出した答えが「2段階TOB」だ。その名の通り、TOBを2回に分けて実施する。
2段階TOBの1回目に当たるのが、現在進行形のTOBだ。当初は買い付け株数の下限を53.22%と設定していたが、これを撤廃した。より高値を提示するベインのTOBに応募すべく、KKRのTOBに応じない株主が一定数出現する可能性を考慮したためだ。
富士ソフトの株主構成は、アクティビストや創業家の持ち分を除けば、ほとんどが金融機関やファンド名義での保有だ。政策保有株式として持つ事業会社もほとんどおらず、KKRとベインどちらのTOBに応募するかの票読みは容易ではない。
KKR自身、「(ベインの計画は)どの程度信憑性があるものかが明確でない」と批判する傍ら、「(ベインが本当にTOBを行うか否かを)見極めたいと考える株主がいることも理解する」姿勢も示している。
2段階TOBでベイン封じ込めへ
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