レバノンの通信機爆発はどう仕組まれたのか 現代の「トロイの木馬」はゲームチェンジャーだ
東洋経済オンライン / 2024年9月26日 9時30分
また、たとえヒズボラのメンバーらによって使用されていた通信機器を爆発させることを狙ったものであったとして、それはポケベルを持っている人が偶然いた場所、つまり、自宅や車の中、路上、食料品店、市場、カフェ、さらには病院など日常生活の場で、家族や通りすがりの人などまったく罪のない人々が近くにいる時に発生した。
数千のポケベルやトランシーバーを一斉に爆発させることは、国際法で禁止されている無差別攻撃に当たり、国際人道法に背く非人道性と非人間性にほかならない。民間人を狙った意図的な攻撃や殺害は戦争犯罪に当たる。
ポケベルが鳴ったとき、それがショッピングセンターなのか、住宅なのか、あるいは交通量の多い通りなのかを知る術はない。現地報道を目にすると、負傷した人の中には血まみれになり、手足や指を失った人も少なくない。レバノン駐在のイラン大使も負傷した。
例えば、アメリカのニューヨーク・タイムズ紙によると、9月18日にはベイルートの南郊に何千人もの人々が集まり、前日17日のポケベル攻撃で死亡したヒズボラ戦闘員2人、救急隊員1人、子ども1人の屋外葬儀に参列した。
そして、その葬式の場で、ヒズボラのメンバーが所有するトランシーバーが爆発し、煙の刺激臭にあふれ、パニックに陥って人々が大声を叫ぶなど大混乱が起きたという。
自国民に対するテロ攻撃を一貫して非難してきたイスラエルが国家によるテロ攻撃を敢行し、戦争犯罪に当たる行為を遂行しているのは極めて残念な事態で皮肉だ。
レバノンのハビブ外相は、今回の連日の通信機器爆発が全国民を恐怖に陥れたとしてイスラエルを非難した。レバノンは物理的な死傷だけでなく心理的な大ダメージを被った。
犠牲者は民間人中心だった
ただ、AP通信によると、犠牲者にはヒズボラの戦闘員も含まれているが、その多くが戦闘員ではなく、主にレバノンのシーア派コミュニティに奉仕するヒズボラの広範な民間活動のメンバーだった。
このため、今回の攻撃はヒズボラの戦闘員の人員にあまり影響を及ぼさないとみられている。その証拠に通信機器連続爆発直後から、ヒズボラはイスラエルと激しい報復合戦の応酬を繰り広げている。
ヒズボラが使用していた通信機器が爆発する壊滅的な攻撃を受け、シリア、イラク、イエメン、パレスチナなど中東全域のイラン武装グループのネットワークに恐怖の波が広がっているだろう。イスラエルが世界のサプライチェーンに侵入する能力を持っていることが明らかになったからだ。
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