金融庁が生命保険業界の「便宜供与」を実態調査 「マネードクター」のほか「保険市場」も照準に
東洋経済オンライン / 2024年9月27日 18時0分
金融庁が生命保険各社と乗り合い代理店との取引に関する実態調査に乗り出している。
調査の柱は、代理店に対する広告料の提供や出向者の派遣などによる過度な便宜供与の実態について。不正が続発する損害保険業界では、自動車ディーラーや企業代理店に対する過度な便宜供与や出向者を通じた情報漏洩が大きな問題となっている。生保業界でも同様の問題が起きていることから、調査を通じて取り締まりを強化する狙いだ。
金融庁が「便宜供与等」についての調査票を送付
金融庁は9月9日、業界団体の生命保険協会を通じて生保各社に「比較推奨販売を歪めうるような販売促進策や便宜供与等に関する各社への点検依頼」と題した調査票を送付した。
質問項目は、乗り合い代理店に支払う販売手数料の体系が合理的に顧客へ説明できるものになっているか、自社商品の優先的取り扱いを意図するような金銭(インセンティブ報酬)の提供があるか、など20近くに上る。
調査のきっかけとなったのは、「マネードクター」のブランド名で保険代理店事業を展開しているFPパートナーへの、生保各社による便宜・利益供与問題だ。
FPパートナーをめぐっては、マネードクターの店頭に掲示するディスプレイ(デジタルサイネージ)広告などで、一部の生保が実態とかけ離れた広告料を支払っていたり、FPパートナーの社員に対する商品研修会の費用の多くを、講師役となる生保側が負担したりという実態があった。
さらに、FPパートナーはそうした手厚い「支援」ですり寄る一部生保の商品について、社内での評価を最高で5倍に割り増しにするといった施策を7月まで実施。成績優秀者にはストックオプションを付与するとしていた。
しかし、複数の保険会社の商品を取り扱う乗り合い代理店には、顧客の意向を把握したうえで、複数の商品を比較したり、特定の商品を推奨する場合にはその理由を説明したり、といった「比較推奨販売」がルール(保険業法施行規則)として課されている。
顧客の最適な商品選択を阻害する恐れ
そのため生保による手厚い支援や便宜供与と、その内容に基づいたかのような代理店側の販売促進策は、比較推奨販売を歪め、顧客の最適な商品選択を阻害する恐れがあるわけだ。
金融庁は7月から、FPパートナーと取引する生保各社に取引状況の個別ヒアリングを実施。さらに調査票を送付して実態を調べていたが、比較推奨販売を歪める恐れが強いと判断し、生保各社に広告料の提供などについて事実上の見直しを要求。さらにFPパートナーに対しては関東財務局を通じて9月6日に、保険業法に基づく報告徴求命令を出している。
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