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岸田政権が国連演説で見せた「政治的リアリズム」 したたかに「アメリカの弱体化」を見越していた

東洋経済オンライン / 2024年9月28日 18時0分

問題が見えないままになっているよりも、トランプによる健康診断を受けて(政治的なスタンスの総合チェックを受けて)、病巣はさっさと切り取ったほうがいいということです。

日本はアメリカの「都合のよい財布」になるだけ

不適切なたとえとそしりを受けることを承知で、日本とアメリカの関係を広域暴力団の総本部(本家)と二次団体(直参)の関係のアナロジーとして説明してみましょう。

アメリカ組という巨大な組では、今、縄張りが狭まってしのぎが厳しくなっています。その縄張りが狭まっているということで、直参である、特に日本組とドイツ組は、まだ集金力を使い果たしていないので、アメリカから"負担"の要求が増えています。

負担とは、上納金の増加と本部当番や地回り(防衛協力の強化)のことです。

そうすると、頭の回転の速い直参組長だと、総本部(本家)が今一つ調子がよくないということに気づき、この後自分たちはどう生き残っていったらいいかを考えます。

しかし、頭の弱い直参組長だと、上納金は増えたけれども、総本部から大切にされるようになったので「本家の跡目は俺かな」などと能天気に考えてしまいます。

ですから、日本やドイツは、そこを間違わないようにしなければなりません。日本の場合、日米同盟は防衛上非常に重要ですが、「それはそれ、これはこれ」でアメリカの要求(軍事的な戦費の負担など)には是々非々で対応していかなくてはなりません。そうでないと、日本はアメリカの都合のよい財布になるだけです。

このように考えていくと、日本の論壇(大手メディア)の大多数は、ちょっと頭の弱い直参組長の考えと同じようなことを主張しているといえます。

それに対して、冷静に全体を見ているのは、むしろ政府官邸の中枢のほうです。その典型が、2023年9月19日の岸田首相の国連での一般演説です。

この演説において、民主主義という言葉は一度も出てきませんでした。民主主義という言葉を封印し、その価値観を強調せずに、日本の立場を語っていた。しかも、イデオロギーや価値観では、もはや現在の世界の問題は解決することができないという趣旨のことまで述べているのです。

これは、言ってみれば価値観外交の否定です。そして明らかに、アメリカの力が弱くなっていることを見据えた上での発言だといえます。

アメリカの弱体化については、エマニュエル・トッドも『「帝国以後」と日本の選択』に収載されたインタビュー「米欧同盟から多極的連帯へ――ヨーロッパは『帝国以後』をどう読むか」で、「アメリカの貿易赤字は年間で5000億ドルにものぼります。アメリカは1日あたり15億ドルの外国からの資本流入を必要としているのです。

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