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岸田政権が国連演説で見せた「政治的リアリズム」 したたかに「アメリカの弱体化」を見越していた

東洋経済オンライン / 2024年9月28日 18時0分

日本の学校でも英語で授業を行うというのが一昔前のトレンドでしたが、今やそういう授業はどんどん減ってきています。さらに、文科省も「グローバル化」とはあまり言わなくなってきました。

このことは、アメリカが弱体化したことと繋がっています。弱体化したアメリカが他の国のために軍隊を動員することができるかといえば、もはやできないと考えるべきでしょう。そのことは、トランプが大統領になればはっきりと示されます。

トランプは「アメリカの利益」だけを考える

トランプが大統領になれば、アメリカの利益だけを考えるようになるので、安全保障の問題にしても、アメリカがこれからも日本を守ってくれるとは考えないほうがいいと思います。

たとえば、日米安全保障条約の問題点について、田原総一朗は著書『トランプ大統領で「戦後」は終わる』で、「この条約は日本がどこかの国から攻められたらアメリカが日本を守るが、アメリカがどこかの国から攻められても日本は守らないという片務条約」であると語っています。このような非対称的な条約に膨大な資金を費やすことを、トランプが認めるはずはありません。

つまりは、日本が自前の防衛力を強化しなければならない事態になり得る可能性も高くなるというわけです。

田原氏はまた「もしも日本が自前の抑止力を持つとすれば、自民党の幹部たちが密かに考えているのは核兵器を持つことであろう」と述べ、さらに、「日本が"普通の国"になるべきだという意見が増えている。"核兵器"を持つとは、イギリスやフランスのように核兵器保有国になるという意味も含んでいる」と述べています。

こうした意見も、トランプが大統領になれば、北朝鮮の核問題とからんで、強く主張されるようになるでしょう。

民主党のカマラが大統領になったとしても、最初は民主主義という理念が強調されるでしょうが、最終的にはアメリカの利益だけが重要になるのです。ですから、日本の防衛力増強は、今後必ず大きな国内問題となってくると思われます。

佐藤 優:作家・元外務省主任分析官

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