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IT系フリーランス男性を追い詰めた役所の非情 「自力で部屋を借りる事がこんなに難しいとは」

東洋経済オンライン / 2024年9月28日 10時0分

アパートを追い出されてから数カ月。多少あった蓄えは、家財を預けたレンタル倉庫代やホテル代にみるみる消えていった。不安なさいなまれながら年明けを迎え、藁にもすがる思いでネットで見つけた「今すぐに住めるお部屋がみつかります」などとうたう一般社団法人に連絡を取った。

ところが、この法人はいわゆる「悪質貧困ビジネス業者」であることが後にわかったという。住まいのない生活困窮者を郊外の不人気物件に割高な家賃で入居させ、生活保護を申請させたうえであらゆる手口で保護費を奪う業者のことだ。

悩んだ末に、生活保護の申請をした

実際、マサルさんがスタッフの男に連れてこられた築57年のアパートも、それまで住んでいた場所とは縁もゆかりもない、電車で2時間近くかかる神奈川県の物件だった。

当初業者側からは「生活保護とセットじゃないと契約は難しい」と言われたが、マサルさんは「家さえあれば仕事はできるので生活保護は考えていない」と伝えたという。このため男から市役所に行こうと言われたときも、公営住宅などを探すのだと期待した。生活保護の申請をさせられると気が付いたのは、福祉事務所で書類を手渡されたときだった。

所持金は間もなく底をつく。ここで男に従わないと、最悪真冬の路上に放り出されたうえ、違約金も請求されるかもしれない。悩んだ末にマサルさんは生活保護の申請をした。男は書類の「保護を受けたい理由」欄に勝手に「お金に困っている」と書き込んだという。

2カ月間のアパートでの暮らしは想像以上に苛烈だった。

まず業者から2万円の布団や3万円の中古テレビ、1万6000円分の食料などを買うよう迫られた。食料は乾麺やレトルト食品が中心でどうみても値段に見合わない。布団は同じものがネットで約4000円で売られているのを見つけた。そもそもこれらを買ったら保護費が残らないと訴えたが、路上生活や違約金への恐怖から従わざるを得なかった。

また、アンペア数の上限が低いのか、電子レンジやパソコンなどを同時に使うとたびたびブレーカーが落ち、火花が散ることもあった。

部屋の中は極寒だったが、エアコンを使うには室内灯などを消さなければならず、仕事ができる環境ではなかったという。

ケースワーカーに業者の手口を告発するも…

しかし、災難はこれで終わりではなかった。業者に続いてマサルさんの再スタートを阻んだのは行政だった。

マサルさんが生活保護の申請をしたのは横浜市。実はマサルさんは早々に担当ケースワーカー(CW)には業者の手口を告発した。割高な家賃に見合わない室内の様子や、押し売りされた物品、違約金について書かれた合意書などの写真も見せた。しかし、CWは「でも、ご自分で契約されたんですよね」と聞き流すだけでまるで他人ごとだったという。

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