自動車技術者の年収「日米で最大6倍差」ある真因 トヨタの899万円が高いと思ったら大間違い
東洋経済オンライン / 2024年9月29日 11時0分
つまり、企業の中でどのような従業員が支配的かという構造が、日米間で違うのだ。ウェイモやテスラの場合に付加価値を生みだしているのは、工場労働者というよりは、新しい技術を開発している技術者なのである。
そして、アメリカのハイテク自動車メーカーで自動運転技術を開発しているレベルの技術者が、日本のメーカーにはいない(少なくとも、支配的な存在ではない)。
日本の自動車メーカーは、すでに確立された技術を用いて、これまでと基本的には同じ構造の自動車を生産している。それに対して、テスラやウェイモは、新しく開発した技術を用いて、これまでとはまったく違う構造の自動車を生産している。本稿の冒頭で述べたこと(アメリカでは自動運転車が利用できるが、日本では利用できない)は、まさにこの違いによって生じているのである。
高度技術者が日本にいない2つの原因
では、自動運転を開発できる高度エンジニアが、アメリカにいて、日本にいないのはなぜか? 原因は2つある。
第1は、大学など高等教育機関の問題だ。アメリカでは、AIは重要な教育・研究分野であり、大学の中で大きな比重を占めている。そして、潤沢な教育・研究費を使って、高度なAIエンジニアを育成している。
それに対して、日本の大学では、AIや情報処理技術は、名目的には教育・研究分野になってはいるが、人員も予算も不十分だ。日本の工学部は、いまになっても、ものづくり中心の製造業を支える人材を育成し続けているのである。その反面で、AIや情報関連の高度エンジニアを育成していない。
第2は、企業側の問題だ。日本の自動車メーカーも自動運転技術の開発・研究を行っているのだが、そのための投資額は、アメリカ先端的IT企業に比べれば、遥かに少ない。このため、人材が養成できていない。
国の豊かさを示す指標として最も頻繁に使われるのは、「1人当たりGDP」(GDPを人口で除した値)だ。これを見ると、2024年において、アメリカの8万5372ドルは、日本の3万3138ドルの2.8倍だ。
ところが、すでに見たように、自動車メーカの年収比較では、日米間の格差はこれより大きい。なぜだろうか?
1人当たりGDPの分子には、家計消費や企業設備投資など、支出面のGDPの計数が用いられる。ところで、支出GDPは、分配面の国民所得と資本減耗(減価償却)の和に等しい。そして、国民所得は賃金と営業余剰などからなる。
GDPに対する国民所得の比率も、国民所得に対する賃金所得の比率も、国によって差はあるが、さほど大きな差はない。だから、所得分布が日米で大差がなければ、技術者の給与格差は、1人あたりGDPの格差と大差がないはずなのだ。
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