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岡山「ベンチャーの村」に出向したJR西社員の仕事 鉄道会社に新しい風を吹かせることができるか

東洋経済オンライン / 2024年10月1日 7時0分

「会社での普段の仕事はもしかしたら私がいなくても回るかもしれない。そう考えると、自身の環境に変化を求める気持ちが深くなっていった」とこのプロジェクトに挑戦した。

ベンチャー企業が続々と拠点を設置

西粟倉村は2008年に「百年の森林構想」を着想し、翌2009年に実動化した。

村の周囲に広がる民有林を村が主体としてまとめ、スギ・ヒノキ林を整備する。また、かつて村内で盛んに行われていた木材産業を再び活性化し、エネルギー・森林資源の村内循環を行い、50年後のつながる「上質な田舎づくり」を目指して、村内外問わずに情報を発信する。単なる自然保護という観点ではなく、森林および木材を活用した持続可能な経営を維持することを念頭にプロジェクトを発足させた。並行して山を管理することで土砂災害を防ぐ狙いもある。

2013年には木材加工業や加工品販売を中心にベンチャー企業が村内に拠点を設けたことを皮切りに、続々と多業種のベンチャー企業が村にやってきた。現在では飲食業や子育て支援事業など60社ほどの企業の拠点があるが、いわば「よそ者」がやってくることに地域の反対はなかったのだろうか。当時の様子を上山隆浩副村長はこう振り返る。

「地元の人たちからすると、先祖が植えた木々を活用せずにそのままにしていても、目の前の日常に変化はない。それを材木化し商品とすることで、外部の人間が“おいしいところだけ持っていく”といった感情は当初はありました。ただ、同時に現状のままでいいと思っている人もおらず、地元には人的リソースも足りない。我が村の今後を長期的に見通し、ローカルベンチャー企業を積極的に受け入れ、共創していく今のスタイルが10年かけて定着しました」

外部から企業や人材を呼び込む場合、定住や移住を求めるケースが多いが、西粟倉村ではそれを求めていない。そうすることで企業・人材の入れ替わりに障壁がなく、西粟倉村を訪れるハードルが下がるほか、定住率という数字に事業の客観的評価が左右されることもない。「JR西日本という大企業ならではのノウハウもあり、村として貴重な人材」と武部氏の出向を歓迎する。

JRで培ったノウハウをたくさん活かせる

そして、村役場と二人三脚で歩んでいるのがエーゼログループだ。豊かな自然を前提とした豊かな社会を築き、その上に経済を成立させる「未来の里山」の実現を目指す企業で、武部氏も役場に籍を置きつつ、こちらでの業務にも従事する。

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