岡山「ベンチャーの村」に出向したJR西社員の仕事 鉄道会社に新しい風を吹かせることができるか
東洋経済オンライン / 2024年10月1日 7時0分
「ちょうど新たな事業が始まる中、武部さんがJRで培ってこられた技術を活かせるシーンがたくさんある」と話すのは同社代表の牧大介氏だ。
「弊社を含め、ローカルベンチャー企業はどこも会社規模が限定的で目先のことに追われてしまう中、本来必要な開発などに人を割くことができない。また、土木と建築の分野は双方がより密に連携し、そこに生態系という視点をプラスしていくことがこの先、社会的に求められていく。武部さんは最適な人材だし、西粟倉村ではそれを経験することができる」
加えて牧氏は「その地域を知る上で、ウナギの目線で物事を見るとより理解を深めやすい」と少しユニークな話を続ける。
「山から河口まで、行動範囲が広く、水中生物の食物連鎖で上位に位置するウナギがいるということは、広域でほかの生物が多く生息している証しです。弊社というものを理解する上で、その入り口をウナギから始めるとわかりやすい」とのことで、着任の2日後の武部氏を車に乗せ、ウナギの生態調査に連れていった。出向前との差のあまりの急展開に苦笑した武部氏だが、JR西日本内で最もウナギに詳しくなったそうだ。
同社が運営する「BASE101%-NISHIAWAKURA-」という施設が村内にある。村内産食材を使った飲食メニューや木工品などを扱う拠点だが、今後3年かけてリニューアルしていく計画があり、武部氏はこの計画に中心的に関わってゆく。
疑問に思ったら「まずやってみる」
「鉄道駅ではないが、人が集まる拠点として、村にとっては駅のような場所。土台となる土木の分野、建築の分野、そしてウナギやメダカなどの生態系を意識した調査を踏まえて、さらなる核となる場所にしていくにはどうしたらよいか、武部さんと共に検討していきたい」という牧氏。武部氏も「本職のノウハウを活かせる分野。しかし、建物を作るだけでなく、ここにエーゼログループのノウハウをどう活かしていくかが課題」と意気込む。
武部氏はここでの日々は「あっと言う間に過ぎていく」と話す。「小さなコミュニティなので、自身の担当外のことでさまざまな課題が同時に起こる。JRであれば部署外で自身が関わっていいのかと躊躇するが、ここでは遠慮していたら何もできない。疑問に思ったらやってみることが大事。快く送り出してくれた同僚のためにもなにかを掴んで帰りたい」。
牧氏も「鉄道に直接的には関係のない事業に関わることで、JR西日本に新しい風を吹かせてほしい」と期待する。西粟倉村での武部氏の挑戦はまだまだ始まったばかりだ。
村上 悠太:鉄道写真家
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