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スズメの減少率が絶滅危惧種レベルという危うさ 全国1000カ所で20年間、研究者と市民が調査

東洋経済オンライン / 2024年10月1日 17時0分

森のウグイスの減少はニホンジカの影響か

チュン、チュンと鳴きながらチョコチョコ動き回るスズメは大都市にもいるが、水田や草地が広がる里地では電線に群がる風景が見られたものだ。当たり前だった景色が変わっているのだろうか。

「ホーホケキョ、ケキョ、ケキョ、ケキョ」。低山でも高原でも春先から夏にかけて、ウグイスのオスによるさえずりが聞こえる。声は聞こえども姿は見えずで、姿は見えないことが多い。それもそのはずで、ウグイスは藪の中にいることが多い。

森林・草原調査では、ニホンジカが生息する森林でウグイスが減少していることがわかった。森林の下藪がニホンジカに食べられてしまうと、居場所がなくなってしまうかららしい。シカが多い調査地点の中には、ウグイスがまったく記録されなくなってしまった場所もあるという。

「モニ1000」のうち、沿岸域の139カ所で行われた「シギ・チドリ調査」では、市民調査員が、シギ・チドリ類の種類の数と個体数を春、秋、冬にカウントし、分析した。今回のとりまとめで扱った最新の2022年のデータの最大個体数を前回とりまとめ時の2017年データと比較すると、春と冬は約30%、秋は約20%減少していた。

2003年からの「モニ1000」の準備段階に行われた調査を含め、2000年のデータと比較すると、減少率は約50~60%に達した。

湿地の減少は人間にとってもリスク

減少が目立つのは、砂浜に生息するシロチドリやミユビシギ、干潟に生息するハマシギ、メダイチドリ、水田で見られるタシギなど。シギ・チドリ類が減少し続けるのはなぜか。とりまとめ報告書は、湿地の減少とともに湿地にいてエサになるゴカイ、貝類、昆虫などが減っていることを挙げている。

認定NPO法人・バードリサーチによると、シギ・チドリ類の多くは、繁殖地であるロシアやアラスカと越冬地の東アジアやオーストラリアを行き来する渡り鳥。バードリサーチの理事兼研究員の守屋年史(もりや・としふみ)さんは「シギ・チドリ類は世界的に非常に危機的な状況にあります」と指摘する。

しかも、シギ・チドリ類の減少の背景にある湿地の減少は、人間にとって将来のリスクを増す現象だ。

守屋さんは「国際的に湿地を保全するラムサール条約の定義では、湿地には砂浜、干潟、マングローブ林、水田も含まれます。湿地には炭素を吸収・固定し、豪雨時にはスポンジのように水を貯える遊水・保水機能があります。いったん掘り返したり埋めたりするともとに戻すのは難しい。湿地の減少は長期的には食料を確保できなくなることや頻発する豪雨災害などの被害を減らせないという問題につながる。このままでは、鳥類どころかたくさん人が死ぬ事態にもなりかねません」と警鐘を鳴らしている。

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