石破茂「裏切り者」新総裁、ネットウケは悪くない訳 自民内では不人気だった、ゲル長官のこれまで
東洋経済オンライン / 2024年10月1日 15時50分
石破氏が一般的に知られるようになったのは、「太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中。」(日本テレビ系)での「爆笑問題」太田光さんらとの討論からだっただろうか。「太田総理」がレギュラー放送されていたのは2006年から2010年だが、それ以前からネット上では「ゲル長官」の愛称で知られていた。
ゲル長官とは「いしばしげる」が「石橋ゲル」と変換できることから、防衛庁長官時代に付いたニックネームで、ネット掲示板「2ちゃんねる」(後の5ちゃんねる)などでは、この呼び名で親しまれていた。
石破氏はある種の「ネタキャラ」として位置づけられており、それが親しみを醸し出してきた。2018年にはイベントで、人気マンガ『ドラゴンボール』のキャラクター「魔人ブウ」のコスプレに身を包んだ。今回の「首相内定」によって、その当時の画像が再び脚光を浴びているが、拡散される根底には、十余年におよぶ「イジられポジション」の歴史があるように思える。
ちなみに「ゲル」と前後して、ネットで普及した有名政治家のあだ名が「ローゼン閣下」だ。マンガ好きで知られる麻生太郎氏が『ローゼンメイデン』を読んでいたのではないかとのウワサから「ローゼン麻生」などと呼ばれるようになった。
なぜ親しまれたのかを考えると、そこに今後の「ネットウケ」に向けてのヒントが見えてきそうだ。あくまで個人的な考察でしかないが、その頃の2ちゃんねるは「リアルな友人には言えない、内に秘めた思いを打ち明ける場所」といった立ち位置だった。
筆者は当時、中学生から高校生となる時期だったが、その頃はまだネット掲示板にはアンダーグラウンドなイメージが残り、あまり「2ちゃんねるを見ている」と公言できない雰囲気があった。
「オタク」のシンパシーを感じたネット民
そうしたネット民が、軍事はもちろん、鉄道やキャンディーズの「オタク」として知られる石破氏に、シンパシーを感じたのではないか。武骨な求道者ゆえに、なかなか周囲には理解されない様子に、ネットユーザーは自らと重ね合わせ、勝手に親しみを覚えた……。
少し考えすぎかもしれないが、石破氏しかり麻生氏しかり、愛称が付いた背景には、どこか「俺たちの代表」としての思いが込められていたように思える。
それから10年以上がたち、ネット世論の中心は、2ちゃんねるから、ツイッター(X)などへと移った。各投稿はアルゴリズムによって出し分けられるようになり、ユーザーに協調したコンテンツに出会いやすくなった反面で、異なる意見と出会う機会は少なくなり、分断を生んだ。おそらく今後、「ゲル」や「ローゼン」のような形で、ネットで話題になる政治家は生まれないようにも思える。
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