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老いた自分と対面「老化アプリ」想定外の利用価値 「未来の自分」を知ると人生が充実する不思議

東洋経済オンライン / 2024年10月2日 13時0分

彼が私にくれたメールによると、研究についての話を読んで、新たな戦略を立てたのだという。それは、未来の自分の理想的な容姿をオンラインツールで入手することだった。

バイドは自分の食欲にブレーキをかけるため、その画像を浴室の鏡と冷蔵庫のドアに貼った。「アイスクリームが食べたくて、キッチンのある1階に降りると、その画像が目に入るので、しぶしぶ自室に戻った」そうである。彼はその画像の容姿に近づくために低カロリーの食事や有酸素運動、ウェイトリフティングをこなし、その結果、体重を大幅に減らすことができた。

バイドの体験には、科学的な裏づけがある。研究者のサラ・ラポソとスタンフォード大学のローラ・カーステンセン教授の研究によると、老け顔に加工した自分の画像を見た成人は、画像を見ていない成人に比べて、運動量が増えたという。

この老け顔の画像は、道徳的な分野にも効果があった。私と同僚が研究室で作成したゲームで遊んでいた者は、自分の老け顔のカラー画像を見た後、ゲームで不正をするチャンスがあっても真面目にゲームに取り組むようになった。実際にフェイスブックで40代の自分の画像を1週間にわたって見続けた高校生は、その週に非行に走る確率がわずかながら減ったという結果も出ている。

これらの道徳的な行動に関する研究については、サンプル数が少なく、その効果も比較的緩やかなものだった。道徳的な行動を起こす要因にはさまざまな要素が絡んでおり、未来の自分の画像はパズルの1ピースにすぎない。それでも重要なピースである可能性はある。

未来をイメージさせると計画性が高まる

オランダの犯罪心理学者で私の共同研究者でもあるジャン・ルイ・ヴァン・ヘルターは、有罪判決を受けた犯罪者に老け顔の画像を見せる取り組みを行った。その結果、仮釈放に移行しても自滅的な行動(飲酒や薬物使用など)は減少が、暫定的ではあるが、確認されている。

「未来の自分」を可視化することで、人は自分自身をよい方向に変えられる。その内容も貯蓄から道徳的な行動、健康的な生活まで多岐にわたる。

未来の自分との対面は、小さな子どもにも影響を与えるようだ。就学前の子どもに未来の自分自身(といっても1日後だが)についてのイメージを思い描いてもらい、それについて説明させたところ、計画性が高まったという結果が出ている。

具体的には1泊の旅行に持参する持ち物について、適切な判断ができるようになったという。1泊旅行の計画は、豊かな老後生活への計画に比べれば単純なものだが、3歳や4歳の子どもの相手をした人ならおわかりのとおり、幼い子どもたちが将来の計画を立てるのは、大変なことだ。

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