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石破氏の「アジア版NATO」構想はポエムに過ぎない ASEAN首脳会議で失笑買う恐れ

東洋経済オンライン / 2024年10月2日 11時0分

2024年8月、南シナ海サビナ礁近海で、フィリピン当局の船(手前)と衝突する中国海警局の船(写真・フィリピン沿岸警備隊提供の動画から、AFP=時事)

石破茂首相が「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」の創設を主張している。得意の安全保障分野におけるかねての持論だ。しかし憲法上の問題が指摘され、日米安保条約や地位協定の見直しに同時に言及していることからアメリカの反発も予想される。

さらなる疑問は、いったいアジアのどの国が参加するのか、という点だ。アジアと看板を掲げながら、アジアの視点が決定的に欠落しており、現況はポエムと言わざるをえない。一介の議員として夢を語るならともかく、宰相として非現実的な構想を打ち出せば、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議などで失笑を買う恐れもある。

「今のウクライナは明日のアジア」とは言うが…

アメリカのシンクタンク「ハドソン研究所」は2024年9月27日、自民党総裁選挙で勝利した石破氏の寄稿をネット上で公開した。首相就任を前提とした掲載である。

石破氏はそのなかで「今のウクライナは明日のアジア。ロシアを中国、ウクライナを台湾に置き換えれば、アジアにNATOのような集団的自衛体制が存在しないため、相互防衛の義務がないため戦争が勃発しやすい状態にある。この状況で中国を西側同盟国が抑止するためにはアジア版NATOの創設が不可欠である」と述べている。

NATOとは北大西洋条約機構のことだ。アメリカと欧州の計32カ国が加盟し、1つの国が攻撃を受ければ、機構全体への攻撃とみなして、集団的自衛権を行使すると定めている。共通の脅威はロシアである。

アジア版の同様の組織ができたとして、日本は憲法9条との兼ね合いから参加は難しいだろう。

2016年施行の安保関連法により、集団的自衛権の行使は可能になったが、日本と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされて国民の生命などに危険が及ぶ存立危機事態となった場合、という条件がある。

NATOと同様の組織をつくり、加盟国のひとつでも攻撃を受けたら戦闘に参加するという積極的な集団的自衛権までも認めたとはとても言えない。

安保はハブ・アンド・スポークから格子状へ

アジアの安全保障環境はこれまで、アメリカを中心にその同盟国である日韓豪フィリピンなどと直接につながるハブ・アンド・スポーク型だったが、バイデン政権となって以降のアメリカは同盟国同士も連携する「格子状」の関係をめざすようになったとされる。

例えば日米韓や日米比が首脳会談で結束を確認する枠組みがそれにあたる。日米豪印の「QUAD」、米英豪の「AUKUS」もその一環ととらえることができる。

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