英語独習は「読む力」から鍛えたほうがうまくいく 日本人が英語を話せないのは読解偏重のせいではない
東洋経済オンライン / 2024年10月3日 18時0分
英語学者・北村一真さんは、「日本人が英語を話せないのは、読解偏重の教育のせい」という昨今の風潮に警鐘を鳴らしてきました。日本人が英語を習得するために本当に必要な力とは何でしょうか。北村さんの新著『名文で学ぶ英語の読み方』を一部抜粋・再構成のうえ、ご紹介します。
留学レベルの「大量インプット」をどう可能にするか?
皆さんの中には、「中高大と英語を勉強してきたのに満足のいく英語力が身についていないのは、リーディング中心の日本の英語教育のせいじゃないのか。今更リーディングなんて」と感じている人もいるかもしれません。
昨今、英語の4技能の中でも特に「スピーキング」が重視され、日本の伝統的な英語教育が文法読解偏重であったと指摘されていることは皆さんもご存じのとおりです。そのような流れの中で、英文読解やリーディングが何かと批判の対象となりやすいのは、不思議なことではないでしょう。
しかし現代において、リーディングは他の3技能を鍛えるうえで最も有効なアプローチと言えます。英語力の向上に不可欠な大量のインプット(読んだり聞いたりして英語を受信すること)を日本にいながら行うのに、正確な読解力は非常に強力な武器となるからです。
英語を読む力がある人にとって、現代のインターネットはインプットの宝庫です。ニュースやゴシップから古典的な文学作品に至るまで、魅力的なテキストに無料でいくらでもアクセスできるようになっています。読解力が高ければ高いほど、自分の興味関心に合った英語の読み物を容易に見つけることができるでしょう。
また、動画配信サイトでは、英語圏のニュースや番組が数えきれないほど公開されています。その多くは英語字幕をつけたり、スクリプトを入手したりすることができるため、しっかりと読む力がある人ならば、こういった動画音声素材を独習に活用することも可能です。
要するに、インターネット社会の現代においては、リーディング力の有無が、有意義な「大量インプット学習」の可否に大きく影響を与えると言ってよく、今こそリーディングに改めて目を向けるべきなのです。
リーディング教材としての「英語小説」の価値
インターネット上にあふれる英文の中から、基本的には自分の趣味嗜好に合った題材を選んで読めばよいのですが、おすすめは、英語で書かれた文学作品で、その中でも誰もがあらすじくらいは聞いたことがあるような有名な物語の原作です。
ネット上に英語の小説なんてあるのか、と思われるかもしれませんが、たとえば、Project Gutenberg:Free eBooksというサイトでは、日本の「青空文庫」のように版権の切れた作品を多数公開しており、短編から長編まで数多くの著名な作品を無料で読むことができます。
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