「第2の南北戦争」という「内戦」を回避できるのか 白人支配終焉と「憎悪の火に油を注ぐ」極右政党
東洋経済オンライン / 2024年10月3日 14時0分
内戦で戦場と化した近未来のアメリカを舞台にした映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が、このほど日本でも公開される。これに先立つ2023年3月に、世界中で「内戦」が急増している現状とその原因、アメリカでも内戦が勃発する潜在性が高まっている状況について、アメリカを代表する政治学者が分析し警告した『アメリカは内戦に向かうのか』(バーバラ・F・ウォルター著)の邦訳が刊行されている。同書第8章「内戦を阻むために今なすべきこと」から一部を抜粋してお届けする第1回(全2回)。
白人が少数派に
アメリカ建国の父たちは、望むならどのような政治体制でも構築できたに違いない。ジョージ・ワシントンを国王にして貴族制を確立したり、あるいは広大で肥沃な農地を分けて、自身を領主とすることだって。
でも、彼らはそうしなかった。民主主義をつくるとの断固たる決意があったためだ。もちろん民主主義は古代ギリシア人による理念の中や、ヒューム、ロック、ルソーなどの政治哲学的著作の中に存在してはいた。それでも現実のものにはなっていなかった。かくも広範な領土で、かくも多数の人々が自らを統治する民主主義を試みた国は存在しなかった。
『フェデラリスト・ペーパー』の筆者であるマディソン、ハミルトン、ジョン・ジェイ─。州権力と連邦権力、多数派による専制の防止、破壊的党派の脅威など、新国家がやがて直面するに違いないあらゆる局面が検討された。彼らは、この新しい国が、どれほど多事争論、取り扱いが厄介で、かつ対立が日常となるかを十分に予期していた。それでもなお、より良き、より自由な世界を信じて、一歩一歩着実に前進した。
むろん数百万もの人々が信じるもう一方の視点からすれば、それは悪夢にほかならなかっただろう。この国は財産を保有する白人のための国家だ。建国者自らが奴隷所有者であって、奴隷が権利や自由を手にしうるなど考えもしなかった。実際、彼らは奴隷を完全な人間とは見なしていなかった。あるいは、土地を所有しない白人労働者が公職に就くなどとんでもないことだった。寛容ではあったのかもしれないが、あくまでも当時の基準でのことだ。
たとえ彼らが「あらゆる男性と女性は平等につくられている」との考えを再確認しうるだけの先見性に恵まれていたとしても、アメリカがやがて直面する無数の変化を予測するなどおよそ不可能であったろう。
工業化の波、巨大都市化、自動車の氾濫。未来における国富や軍事力、グローバル化に洗われつつ生起する変化など知りようもなかった。インターネットはどうか。気候変動は。火星旅行。想像だにしえなかったことだ。
多民族的民主主義の創造
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