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「ああ、ロミオ」短いセリフに詰まった深い意味 有名なセリフには有名になる理由がある

東洋経済オンライン / 2024年10月3日 19時0分

(写真:YasaShutter/PIXTA)

今年、生誕460年を迎えたウィリアム・シェイクスピア。約400年前の劇作家でありながら、その作品は、現代のビジネスで成功するために必要な要素がつまっていたり、今で言う「ツイ廃」のような主人公が登場するなど、先駆的な内容です。

本稿では、蜷川幸雄のもとで演出を学び、シェイクスピア劇を現代にアップデートする演出家・木村龍之介氏が、『ロミオとジュリエット』のあの有名なセリフがなぜ凄いのかを解説します(『14歳のためのシェイクスピア』より一部編集して抜粋)。

海外の政治家がみな学んでいるセリフ

シェイクスピアの作品には、現代の私たちから見ても「すごい」「ヤバい」言葉がたくさん出てきます。その中で今回注目したいのは、「相手を行動させる言葉」です。

自分の信念、主義主張を伝えて、人々を行動させる……みなさんにぜひ知ってほしい、『ジュリアス・シーザー』という作品の言葉があります。それは、海外の政治家が絶対に学ぶという、アントニーの演説シーンです。人前でスピーチをする時にはぜひ参考にしてほしい、演説の手本となるような名場面です。

ローマで民衆から絶大な支持を得ていた政治家、ジュリアス・シーザーが暗殺されます。暗殺したのはローマの政治家たち。首謀者の一人にはシーザーの側近、ブルータスもいました。信頼する相手に刺されたシーザーが「お前もか、ブルータス」と言ったのはあまりにも有名です。

シーザーが殺されたのを一番悲しんだのが、彼を心から尊敬していた政治家アントニーでした。アントニーは意を決して市民たちの前で演説をします。彼は、暗殺者たちがシーザーを殺したことで、ローマ市民にいかにひどい結果がもたらされるかを訴えかけるのですが、ここでアントニーは、自分を〝下げて〞語るのです。

私には知恵も言葉も権威もなく、
身振り手振りも弁舌も説得力もない、人の血を
騒がすことなど到底無理だ。

(『ジュリアス・シーザー』第三幕第二場、松岡和子訳、ちくま文庫)

しかし、アントニーは本来めちゃくちゃ弁が立つ人なんです。こんな風に自分を下げることが、相手を行動させることにつながると知っているのです。「みんな、立ち上がれ!」みたいに最初からただ命令するだけじゃダメなんですね。

仮定法を使うことで相手の心に火を植え付ける

そして、アントニーは「もし私がブルータスで、ブルータスがアントニーだったら」と仮定を使って続けます。

私がブルータスで、ブルータスがアントニーだったなら、
アントニーは諸君の心に怒りの火をつけ、シーザーの
傷という傷に舌を与えてしゃべらせ、その結果ローマの石すら
決起して暴動を起こすだろう。

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