なぜカープは「非合理的な盗塁死」を繰り返したか 「伝統を重んじすぎて失敗」は企業でも存在する
東洋経済オンライン / 2024年10月3日 17時15分
もちろん、時には辛抱強く耐えることも必要だが、危機だからこそリスクを取ってでも新しい風を吹かす。そのような勇気が、リーダーには求められるものであり、これは野球にもビジネスにも共通する。結果から見れば、今季の新井監督には、そういった大胆さも必要だったのかもしれない。
伝統に縛られた非合理な「盗塁」が得点不足を加速
日替わり打線問題の他、特にシーズン序盤~中盤のカープ野球で目立ったのが「盗塁死」である。カープといえば足を絡めた「機動力野球」のイメージもあるが、実態は違う。過去3年を見ても盗塁数がセリーグトップだったことはない。
データを見ると、そもそもカープは盗塁が苦手な感もある。3連覇を果たした2016~2018年こそ、いずれも盗塁数はリーグトップだったものの成功率がリーグ1位だったのは2017年のみ。2016年、2018年ともに成功率はリーグ4位に甘んじている。
今年の話に戻ろう。10月1日終了時点で、カープの盗塁数は64で、失敗が51。成功率は55.7%である。成功数はリーグ2位であるものの、成功率は下から2番目で「数打ちゃ当たる」状態といって差し支えないだろう。
新井監督は、監督就任時に機動力野球の復活を掲げた。しかし、就任した2023年の成功率がリーグ4位、今季も上述の通りで、データからは「向いていない」という結論を出さざるを得ない。
特に今シーズンは開幕から“投高打低”、つまり得点が入りにくい環境だとの指摘が多かった。そんな中、長打力不足にあえぐカープにとって、1つのアウトの重要性は言うまでもない。
そもそもカープの本拠地であるMazda Zoom-Zoom スタジアム広島は、土と天然芝のグラウンドで屋根もなく、時間帯によっては日光と打球がかぶる。打球のイレギュラーも多く一部では“魔境”と呼ばれることがあるほどである。そうした地の利を生かさず、みすみすアウトを献上することが多いのは非常にもったいなかったのではないか。
カープの例に限らず、統計的に得点へつながりにくいとされる送りバントの多用や、右投手には左バッター、左投手には右バッターといった“左右病”と揶揄される采配など、野球にはデータを超越した戦術がいまだ多い。
野球を見ていて「何でそんな采配をするのかなあ」と嘆く読者も多いだろうが、実はこうしたデータ軽視は、ビジネスでも見られる。例えば、生産性を高める上で、本来は「投入量」に対する「リターン」の多さという2軸で考えるところ、前者の投入量のみで考えるケースが多いと横山氏は話す。
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