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なぜカープは「非合理的な盗塁死」を繰り返したか 「伝統を重んじすぎて失敗」は企業でも存在する

東洋経済オンライン / 2024年10月3日 17時15分

「典型例が『時短』。労働時間を減らせば生産性が上がる、と考える企業が多すぎる。コスト削減も似たようなもので、利益アップのためにとにかくコストを下げることしか考えない企業も多い」

こうした手法は「甘い罠」だと横山氏は続ける。そもそも投入量、コストの削減には限度があり、短期的な思考といえる。言葉を換えれば「ラクしてうまくいく方法」ともいえるが、すぐにできる簡単なものは、他社も追随しやすい。人材採用で金銭的な待遇だけを向上させても、他社が横並びにすればすぐに価値がなくなる、と考えればわかりやすい。

そうではなく、より長期的な視点に立って、適切な投資を行い、長い期間をかけてでも価値を培うこと。急がば回れこそ、ビジネスの成功の秘訣だと横山氏は話す。加えて、何にコツコツと取り組むべきで、逆に何を切り捨てるべきかの見極め力も肝心だと付け加える。

応援する球団の監督が、どんな状況でもバントを選んだり、左投手には右打者を、右投手には左打者を代打に送る時、われわれ野球ファンは「またかよ……」となりがちだが、何のことはない、データ軽視は企業でも起きているのだ。

「地の利」を生かす、渋沢栄一の考え

「地の利」については、地方企業の例が挙がった。ある地方の印刷会社では「地域密着」「顧客第一」を掲げ、週末に開催する地域の縁日に社員を参加させる、ボランティアの炊き出しに積極的に参加する、小中学校の印刷物を無償で引き受ける、といった取り組みをしていたという。

しかし、社長が代替わりしてからはSNSを中心にマーケティング活動へと軸足を移し、積極的な投資を行うように。その結果、売り上げは微増したものの利益が激減してしまい、赤字へと転落してしまった。背景にはマーケティングコストや、商圏を地域から全国へ広げたことによる経費の増加があるものの、横山氏は「地域密着のブランドを崩したことこそ、最大の失敗要因」と指摘する。

もう一つの例として、北陸にある建設会社のエピソードも挙がった。この会社では、売り上げの拡大を狙い、より市場規模の大きい関東圏へと進出したものの、自社の強みを生かし切れなかっただけでなく、中京圏の企業が北陸に進出したことで、地元のシェアも落としてしまったという。

「二世帯住宅に強みがあった会社なのですが、地盤の北陸は二世帯の同居が多い一方で、関東圏では核家族も多く、親と同居する世帯はそう多くない。

2020年の国勢調査では、親と同居する夫婦世帯の割合が最も低いのが東京で、神奈川が44位、埼玉は41位という結果だった。自社のドメインを理解せずにマーケットの規模と、都心部への過度な期待で事業拡大へと走ってしまったという、地の利を生かせなかった好例といえる」

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