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イラン「イスラエル攻撃」これから何が始まるのか 水面下で全面対立回避の努力が行われていたが

東洋経済オンライン / 2024年10月3日 16時15分

ボールはイスラエルの手に?イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(Jeenah Moon/Bloomberg)

ゲームのルールが完全に変わったーー。イランがイスラエルの空軍基地や対外情報機関モサド本部を狙い、約200発の弾道ミサイルを発射し、数十発が着弾した。

【写真】イランによる弾道ミサイルが着弾したイスラエルの施設

イランは4月にもイスラエルを弾道ミサイルなどで攻撃しているが、今回は迎撃がより困難な弾道ミサイルを短時間に集中してイスラエルの治安関係の中枢に発射。「報復する」というショー的な要素が大きかった4月の攻撃よりも実質的な打撃を狙ったものだ。

今回の攻撃によりイランは直接的にハマスとイスラエルの戦いであるガザ戦争に関与することになり、イスラエルとの全面戦争もちらつく。イスラエルの報復は確実視され、核施設が報復対象になれば、イランはより破壊的な攻撃を行う可能性があり、全面的な戦争に発展する可能性が一段と高まりそうだ。

なぜこのタイミングでの攻撃になったのか

7月末にハマスの最高幹部イスマイル・ハニヤ氏がテヘランで暗殺された後、イランの最高指導者アリー・ハメネイ師は報復を宣言していたが、大方の予想に反して踏みとどまっていた。

舞台裏では全面戦争をおそれるアメリカやヨーロッパ諸国がイランに報復を思いとどまらせるよう活発な外交工作を展開。その代わりにイラン側にガザ地区やレバノンでの停戦を実現することを確約していた。イランとしても、イスラエルとの全面戦争は望んでおらず、軍事圧力で停戦という成果を引き出すことでハニヤ氏暗殺問題の落とし所を探ろうとしていた。

ところが、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は停戦を拒否。ポケベルやトランシーバーに仕掛けられた爆発物が一斉に爆発して約40人が死亡、3000人以上が負傷したほか、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラへの攻勢を強めた。

さらに、イランが支援する中東各地の対イスラエル抵抗勢力の中でも最もカリスマ性を誇るヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ師を、本部地下施設への地中貫通型爆弾(バンカーバスター)による空爆で殺害した。

「大きな賭け」に出たイラン

イランの外交・軍事戦略の根底にあるのは「戦略的な忍耐」である。西側諸国による経済制裁下にあるイランと、アメリカと強固な同盟関係にあるイスラエルを近代的な軍事装備の面で比較すれば、その差は歴然だ。

イランは、イスラエルと真正面から衝突するのは得策ではないとの判断の下、匿名性の高い攻撃や民兵勢力を使った「非対称戦争」を仕掛け、4月の直接攻撃以降もこうした枠組みの中での戦いに収めようと努めてきた。

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