近鉄5800系「ロング・クロス転換シート」の先駆者 「スムーズな乗降」「乗り物本来の姿」の両立狙う
東洋経済オンライン / 2024年10月4日 7時0分
近畿日本鉄道の奈良線などで通勤通学の足として活躍する「5800系」は1997年に運用を開始した一般車両だ。
【写真40枚を見る】どっちの座席配置が好き?「スムーズな乗降が可能なロングシート」と「進行方向に向かって座るクロスシート」の転換の様子
線区別でみると、6両編成が奈良線に5本、大阪線に2本、4両編成が名古屋線に1本と決して大所帯とは言えない。が、近鉄にとどまらず、鉄道各社の車両開発に影響を与えたエポックメイキングな存在と言える。
「居住性と乗車効率を両立」
最大の特徴は、側面の窓を背にしたロングシートと進行方向を向いたクロスシートの両方に自動で転換できる「デュアルシート」を営業列車で初めて本格的に備えた点。4扉車のドア間に2人掛けを3脚ずつ配置した。ロングシート・クロスシートの頭文字をとって「L/Cカー」と呼ばれる。
【写真】「スムーズな乗降が可能なロングシート」から「進行方向に向かって座るクロスシート」への転換の様子。最新車両の「8A系」にも継承されている(40枚)
近鉄がデビュー当時に作成した車両紹介の冊子には、L/Cカー開発の背景について「当社の通勤輸送は、比較的乗車時間の長いターミナルと沿線都市を結ぶ都市間輸送がメインであり、近年の車両数の増加により混雑率も低下しつつあるということから、これからの輸送サービスは、乗り物本来の姿である進行方向に向かって座っていただく座り心地のよいクロスシートの提供が基本であると考えました」と記されている。
そのうえで「しかし、ピーク時には乗降時分短縮のために、立席面積が広くとれて乗車人員が確保でき、スムーズな乗降が可能なロングシートが適しています。そこで、クロスシート配列にもロングシート配列にも転換が可能なシート機構を独自に開発し、通常はクロスシートで、ピーク時にはロングシートとなる居住性と乗車効率を両立させたオールマイティーな4扉車両を製作することとしたものです」と説明する。
開発に当たってはプロジェクトチームを立ち上げて「特急車両並みのデザイン展開」を図った。チームには、「アーバンライナー」や「伊勢志摩ライナー」などを手がけたデザイナーの山内陸平氏のほか、天龍工業技術開発部、近畿車輛デザイン室・設計部、近鉄車両部が名を連ねる。「座り心地やデザインに関係するシートの形状と、転換機能の実現とは寸法上相反する」ため、デザイナーと設計者は3次元の寸法チェックを何度も繰り返したという。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
超~~~長い「伝説のロングシート」とは? 各地のラッシュ輸送を担った「座席と吊革だけの動くハコ」が造られたワケ
乗りものニュース / 2024年10月3日 7時12分
-
「近未来感があってめっちゃいい」近鉄の新型車両『8A系』の試乗会 10月7日に運行開始
MBSニュース / 2024年9月30日 11時0分
-
まだ走っていたのか! 井川線最古の「オープンデッキ」客車 あれ!? 列車の“中間に”機関車?
乗りものニュース / 2024年9月29日 15時12分
-
昔は庶民向けがクロスシート!? 「ロング兼用席」の進化 見た目フツーの車両が“大変身”!?
乗りものニュース / 2024年9月9日 7時12分
-
近鉄の新型一般車「8A系」ついに10月デビュー! 16年ぶり 奈良・京都線系統から“昭和世代”を置き換え
乗りものニュース / 2024年9月6日 15時3分
ランキング
-
1USスチールCEOに報酬百億円 日鉄買収後、米民主党議員が批判
共同通信 / 2024年10月4日 9時35分
-
2熟年離婚で陥る「老後破綻」の知られざるリスク 制度改正された「年金分割」にも注意が必要
東洋経済オンライン / 2024年10月4日 7時0分
-
3「リチウムイオン充電池」どう捨てるのが正解か 充電器、加熱式たばこ、ワイヤレスイヤホン…
東洋経済オンライン / 2024年10月3日 11時0分
-
4トコジラミ、駆除のプロが証言する「本当の怖さ」 「20㎡で17万6000円」でも依頼急増、納得のワケ
東洋経済オンライン / 2024年9月30日 8時0分
-
5「値上げしないサイゼリヤ」の利益が回復した背景 本決算直前!黒字確保のためのあの手この手
東洋経済オンライン / 2024年10月4日 9時0分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください