亀田製菓が「コメ」を再利用して名刺を作った事情 原料米の副産物からできた「おこめ名刺」を配布
東洋経済オンライン / 2024年10月4日 10時30分
渡した名刺でひとしきり盛り上がる――。ビジネスシーンでの対面交渉が復活し、コロナ前には当たり前だった日常の光景が戻って1年あまり。読めない苗字、武士や貴族のような名前、著名芸能人と同じ名前など、1枚の名刺が初対面の人同士の距離を縮める。
米菓最大手の亀田製菓が、今年5月から全社員に持たせはじめた、白米の形をした名刺も、渡した瞬間から盛り上がることは間違いない。形状がチャーミングであることに加え、渡した社員が語れるバックストーリーもあるからだ。
老舗紙問屋とタッグ
この名刺は同社が今年5月に立ち上げた、アップサイクルプロジェクト「Re Kameda」の第1弾として制作されている。使用されている紙は、同社の工場から出る原料米の副産物を再利用したものだ。
米菓の製造工程では、食品向けには再利用できない副産物が生まれる。そのうちの1つが原料米で、その96%が家畜や魚の飼料等に再利用されてきた。
さらなるフードロス削減に向け、原料米の副産物の活用先を、社内で使用する紙にも拡大しようという試みが今回のアップサイクルプロジェクト。社内公募で応募があった、社員のアイデアが元になっている。
当初は同社の既存取引先の製紙メーカー数社に開発を打診したが、原料米の副産物を同社が求めるスペックの紙にする技術は極めてハードルが高かった。
難航する中で、開発担当者がたまたまテレビの報道番組で目にしていた、廃棄米を原料とするフードロスペーパー「kome-kami」が突破口になった。1890年創業の老舗紙問屋・ペーパル(奈良県奈良市)が2021年2月に独自開発した製品だった。
亀田製菓側からペーパルにアプローチし、2023年2月に亀田製菓の工場から出るコメを使って製造する開発に着手。約1年で製品化に至った。
亀田製菓は以前から原料米の副産物を粉砕して再利用している。水や油を含んでいるかどうかや、味がついているかどうかなどで複数の等級を設けているほか、粒度によっても複数の等級を設け、用途に応じて使い分けている。「ペーパルの製造技術に合致する等級のものを弊社が提供できたことで、短期間での製品化が実現した」(亀田製菓)という。
コメの会社になる
今回、亀田製菓はこの名刺の制作対象を、営業担当者だけでなく、普段名刺の作成対象にしていない工場のパートスタッフ、百貨店スタッフ、グループ会社従業員にも広げた。
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