「もう1食ほしい」が自衛隊で通用しない絶対理由 ドケチぶりにもほどがある自衛隊の給食不正
東洋経済オンライン / 2024年10月5日 9時0分
しかも、人の迷惑も顧みない。給食列の最初に並んでいて複数持って行く。そうなると最後尾の隊員にまで足りなくなることが起きる。だから処分の対象になるのだ。
第3は、常習犯だからである。ドケチは図々しいので何度も繰り返す。だから隊員は同情しない。
果たして、1度や2度の無銭飲食で自衛隊は人事処分をするものだろうか。人生で1度、1人に1つの水羊羹を2つ取ったからと、身内を処分するものだろうか。
さすがに、そのようなことはない。そんな隊員はもはや常態化しているから、注意しても聞かない。だから処分となるのだ。
図々しいからこそ、「現場で怒られないから、自分の行為は認められている」と自分のいいように解釈している。そもそも無銭飲食も不正喫食も、まともな神経を持っているならやらない行為なのだ。
ただ、怒られないのは当然である。現場の下士官兵が、士官や先任下士官に文句は言えないことは前に述べたとおりである。士官の給養班長もいるが、大勢の前で相手の体面をつぶすようなことは言えないものだ。目に余ったとしても、内々に叱る。遠回しに、人目につかないように注意する。
筆者は「タッパー士官」の例をよく覚えている。給食の最後の方に来て、余ったおかずをタッパーに詰めて持ち帰るという高級士官だ。同じ基地の違う部隊で、筆者と仕事は同じ。しかも人となりはよく知っている。
本人は必ずしもケチンボではなかった。タダのものなら何でもほしがるという、貧乏くさいタイプだった。
そこで、給養班長が別件を口実に筆者の事務室に来た。そして世間話をしたうえで「お願いだから注意してくれ」と切り出した。同部隊で同階級だが、定年間近で神様のような人が、大学を出たばかりの筆者に頭を下げるという形をとっている。
しかも、部下の人数分のアイス、余った航空加給食までお土産で持ってきた。断る立場でもないし、断れるわけもない。
おそらくはこんなやりとりだったと思う。「士官全体の体面の問題」「下士官兵は何も言えない」「私もオーラを出しているけど止めてくれない」「違う部隊だから言いにくい」「アナタは先生と親しいからそれとなくね」「これも若いうちの経験だよ」といったあたりである。
注意してもぬかにくぎ、そして処分へ
結局は、先方の准尉さんに再委託した。実質的には若造士官の何倍もエライから、高級幹部に諫言できる。先生とも20年や30年の人間関係なので何でも言える。「みっともないからおよしなさい」「内々で注意してもらえるうちだよ」程度は言ったのだろう。以降はその話はなくなった。
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