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「踊る大捜査線」が日本の映画興行に起こした革命 90年代の邦画がいかに惨憺たる状況だったか…

東洋経済オンライン / 2024年10月5日 12時0分

2000年代は、フジテレビを筆頭に映画ビジネスにテレビ局が取り組んだ時代だった。TBS、テレビ朝日もそれぞれドラマを映画化してヒットさせた。日本テレビは「20世紀少年」を2008年から2009年にかけて3部作で制作し、テレビ放送も活用したクロスメディア展開でプロジェクトを大成功させた。

そして「踊る」シリーズと「海猿」シリーズで信頼を得たROBOTはVFXを駆使する山崎貴氏の監督で「ALWAYS 三丁目の夕日」を日本テレビの力を得て制作し、32億3000万円のヒットとなった。テレビ局による映画界の活性化の波にうまく乗れたと言える。

かくして、90年代に洋画に押しつぶされそうだった邦画は、2000年代にテレビ局のパワーで復活した。

2000年代の興収を邦画と洋画で比べると、2000年には邦画543億円、洋画1165億円だったのが2006年には邦画1079億円に対し洋画949億円と逆転している。2007年に一度抜き返されたものの、その後は邦画のほうが高い状況が続き今に至っている。

「踊る大捜査線」と「海猿」の2つのヒットシリーズはその後も続編が公開され、2012年に最終作が公開されて最後の輝きを放った。

テレビと映画は渾然一体となりつつある

その後、テレビ局は放送収入が行き詰まり、以前ほど映画制作に出資しづらくなった。それでもドラマを映画化したヒット作はあったし、今も映画業界の重要なプレイヤーではあるが、2000年代に力強く牽引したほどのパワーは発揮できていない。むしろアニメーション作品が新たな作家たちの登場でまた驚くようなヒットとなり、東宝など映画会社も力をつけてきた。

だが「踊る大捜査線」がテレビと映画の境界線を突き崩し、両者が渾然一体となって作品作りをする文化を生み出した、その成果が今に続いている。ROBOTと共に映画を作ってきた山崎貴監督は、東宝のIPであるゴジラを原点以上に回帰させた「ゴジラ-1.0」でアメリカ映画界に切り込んだ。山崎氏のアカデミー賞受賞の元を辿ると「踊る大捜査線」があると言えるかもしれない。

この秋に公開される「踊る」シリーズの2つの映画は、室井慎次が主人公。「支店」つまり湾岸署の現場で事件と戦う刑事青島が、「本店」つまり警視庁の室井に警察を良くしてくれと言った、その約束を果たせるかの物語らしい。テレビと映画を2人の関係に見立てると、テレビは映画界を良くしていくのか、そんな力はもう残ってないのか。

私は、テレビが映画のためにできることはまだあるし、力を発揮してほしいと思う。いや、当時とは別の意味でテレビと映画は渾然一体となりつつある。もはやどちらが上か下かではなく、新しいものづくりに業界の壁を超えて取り組むべき時なのだと思う。

境 治:メディアコンサルタント

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