日立、国際鉄道見本市に「10年前の車両」なぜ出展? イタリア鉄道の高速列車、何が変わったのか
東洋経済オンライン / 2024年10月5日 7時0分
外観は同じでも中身は大変化
今回展示された車両は、ドイツ方面への直通運転を開始するための準備として、2023年11月8日にトレニタリアと契約を交わした8両編成30本(追加オプションとして+10本)で、足回りと内装に大幅な変更を加えたビッグ・マイナーチェンジ版として誕生したものだ。この増備によって、フレッチャロッサ・ミッレは8両編成90本以上の大所帯に成長した。
誕生からずっと「ボンバルディア+日立」という形で製造が続けられてきたが、ボンバルディアはアルストムへ吸収合併され、ゼフィーロ300プラットフォームは日立へ譲渡されることが決定。今回発表された新型からは日立が単独のサプライヤーとなり、製造銘板も従来のボンバルディアなどの社名が入ったものから「Hitachi Rail STS S.p.A.」という表記に改められている。
技術面で具体的に変わった点としては、従来の車両では旧ボンバルディア由来だった主電動機とパワーユニットを日立で再設計したことが挙げられる。これによってより高いエネルギー効率を実現しており、さらにこの変更に合わせて台車や列車制御監視システムも新しくなっている。
これらの変更点に日本の技術を取り入れたのかが気になるところだが、技術的な部分は完全に日立製となったものの、技術開発および製造そのものはすべてイタリアで行ったという。「日本ブランドのイタリア製」というわけだ。
そして最大のポイントは、AIを活用したデジタルプラットフォーム「HMAX(エイチマックス)」の搭載を可能としたことだ。
HMAXは、日立が今回のイノトランスで発表した最も注目される技術の1つだ。半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)との協力によるもので、架線、線路などのインフラや車両の状態を記録、AIを活用してほぼリアルタイムで処理し、工場や保線現場へ送信。故障や不具合の発生を未然に防ぐことにつなげる。
架線の状態をチェックするカメラや台車の振動などを記録するセンサーなどはすでに実装しており、前段階の運用が行われている。現在は、記録した情報を工場へ持ち帰って処理しているが、HMAXが搭載されれば、その場で情報が解析され、処理速度が飛躍的に向上することになる。
内装も変わり、最上級のエグゼクティブクラスは座席数を大幅に増やし、シートや照明などのデザインも新しくなった。デザインは日立社内で行っているが、イタリアの著名なデザイン会社、ジウジアーロ・アルキテットゥーラ(GIUGIARO ARCHITETTURA)の工業デザイナーからサポートも入っているという。エグゼクティブクラスではケータリングサービスの内容も一新する予定となっている。
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