日立、国際鉄道見本市に「10年前の車両」なぜ出展? イタリア鉄道の高速列車、何が変わったのか
東洋経済オンライン / 2024年10月5日 7時0分
完全な「新型」登場の可能性は?
外観デザインは従来とほぼ同じながら、技術面を中心に中身は大きく変わった今回のフレッチャロッサ・ミッレ。だが、完全な新型ではないマイナーチェンジ車両であることは確かだ。今後、フルモデルチェンジされた新型車両が登場する可能性はあるのだろうか。
日立製作所執行役専務で、鉄道ビジネスユニットCEOのジュゼッペ・マリノ氏は、「(外見以外の)中身は完全に新しくなっており、今回発表したこの車両こそがニュージェネレーション(第2世代)の車両だ」と前置きをしつつ、「しかしもちろん、われわれはこれからも歩みを止めることなく進化を続け、来るべき未来へ向けて仕事を進めていく」と語った。
では、顧客であるイタリア鉄道は日立製車両に満足しているのだろうか。そして、今後の日立との関係性についてはどう考えているのだろうか。
イタリア鉄道旅客部門・トレニタリアのCEO兼マネージングディレクターであるルイージ・コッラーディ氏に、まずフランス、スペインそしてドイツへの参入が完了した後の未来について尋ねると、「それはとても難しい質問で、夢ばかりを語るわけにもいかない。現在は計画されている仕事に集中しなければならないが、他の国へ進出するという夢は持っている」との答えだった。
もし他国進出によってさらに追加の車両が必要になった場合、日立との関係性、パートナーシップを今後も継続していく考えなのだろうか。
コッラーディ氏は、「だからこそ、今私たちは(最新世代となった車両の発表という)この場にいる」と述べ、「われわれの戦略は全体に統一された車両を使うことで、それはイタリアだけではなく、(同社が今後進出を考えている)他国でも同様だ。この車両は全ヨーロッパで運行ができる規格で製造されており(※現在、すでに7カ国で認可を取得済み)、われわれの考える戦略を達成するために日立とのパートナーシップは絶対必要だ」と力説した。
「あらゆる高速列車と比べてベスト」
そして、日立製車両に満足しているかとの問いについては、「もちろんだ。快適性、信頼性、スピード、美しいイタリアン・デザイン、すべてにおいて高次元にバランスの取れた、世界中のあらゆる高速鉄道車両と比較してもベストな車両だ」と語った。
今、イタリアで公共交通を利用すると、鉄道のみならず地下鉄やトラムなど、あらゆる場所で「HITACHI」の文字を見かける。今後も進化を止めることなく実績を積み重ねていけば、イタリア、そしてヨーロッパの鉄道市場での日立ブランドの存在と立場はより盤石なものとなるだろう。
橋爪 智之:欧州鉄道フォトライター
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