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「地面師たち」ハリソン山中にこうも魅了される訳 極めて反社会的な男が語る、所有欲の愚かさとは?

東洋経済オンライン / 2024年10月5日 12時0分

豊川悦司が演じるハリソン山中。彼はそのどこか人間離れしたミステリアスなたたずまいに象徴されるように、わたしたちにとって悪魔的な存在であるといえるだろう(画像:『地面師たち』より)

Netflixのドラマシリーズ『地面師たち』が大ヒットしている。

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配信直後から国内再生ランキングで1位を記録し、国内外で話題になっている。2017年に起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」をモデルにするなど、ノンフィクションの要素を多分に含んだ社会派エンターテインメントが圧倒的に支持されているのは、現在の世相も関係しているが、おそらくもっと深いところでわたしたちの感情を突き動かしているからだ。

根底にあるのは普遍的な思考への回帰

ドラマの見所は、他人の土地の所有者になりすまし、不動産デベロッパーに詐欺を働く地面師グループの巧妙な手口をめぐって展開されるサスペンスである。

しかし、その根底には、人類史にまたがる普遍的な思考への回帰が垣間見える。それが昨今の過剰な投資熱や所有欲というものに対する反発や、その背後にある不平等感などと相まって、単なる犯罪ドラマ以上のカタルシスをもたらしているのだ。

物語は、典型的なアンチヒーローものだが、特に豊川悦司が演じるハリソン山中という極めて反社会的なキャラクターが非常に重要な位置を占めている。

ハリソン山中はただの凶悪犯罪者ではない。彼には驚くほどさめたところがある。第5話で、グループの交渉役である辻本拓海(綾野剛)を相手に、高価なウイスキーについて講釈し、その流れで突然「土地自身の本能」の話を語り出すのだ。

ハリソンは、「土地は土地として、太古から、ただ、そこに存在していただけです」と述べ、それを所有しようとする人間たちについて、「知恵が文明を生み出し、生物界の頂点に君臨させ、そして、こんなにひどい世界を作り上げた。その最たる愚行が土地を所有したがるということです」と批判してみせる。「本来は誰のものでもないはずなのに、人間の頭の中だけで土地の所有という概念が生み出され、それによって戦争や殺戮が繰り返されてきた」と。

そして、「土地自身には人間を滅ぼしたいという本能があるのかもしれませんね」などと、まるで自らの詐欺行為を棚に上げるような、あるいは正当化するかのような結論に達するのだ。

要するに、ハリソンにとって地面師詐欺は、欲深き人々に対して警鐘と教訓を与える愛のムチなのだ。そういう意味において、彼はそのどこか人間離れしたミステリアスなたたずまいに象徴されるように、わたしたちにとって悪魔的な存在であるといえるだろう。

土地にまつわる、恐ろしい寓話

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