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ノーベル賞の候補に?「やせ薬」開発者3人の功績 発表は7日、前哨戦とされる「ラスカー賞」を受賞

東洋経済オンライン / 2024年10月6日 9時0分

実は、この研究実績はハベナー氏によるものとされ、モイソフ氏は当初、評価されなかった。ハーバード大学のエリート医師と、ユーゴスラビア移民の基礎研究者ということで、差別が影響していたのかもしれない。

このことについては、「オゼンピック革命はスベトラナ・モイソフの作品に根ざしているが、彼女は物語から排除されている」など、医学界の体質を批判する声も強い。ちなみに、オゼンピックとは、GLP-1の分泌を促す薬の商品名のことだ。一般名はセマグルチドという。

3人目のクヌーセン氏の役割は創薬、つまり薬の実用化を担った。

GLP-1を薬にするには困難を極めた。それは物質が生理学的に不安定で、体内ですぐに分解されてしまうからだ。このままでは薬として使えない。このことを克服したのがクヌーセン氏だ。

あまりに専門的になるため本稿では詳述しないが、GLP-1に脂肪酸を結合させるなどして、体内で安定化するよう工夫を施した。

彼女はデンマークの大学を卒業した化学者だ。卒業後、地元のノボ・ノルディクスに就職し、企業内の研究者としてキャリアを積んだ。2009年にアメリカの食品医薬品局(FDA)から承認されたリラグルチド(商品名:ビクトーザ)の開発は、彼女が主導したとされている。

この3人が大きな実績を上げたことは議論の余地がないが、これだけでは、10%程度の体重減少が期待できる糖尿病治療薬を開発しただけという見方も可能だ。

糖尿病治療薬は、GLP-1受容体作動薬のほかにもたくさん存在する。なぜ、ラスカー財団は彼らを特別に表彰したのだろうか。それは、この薬はダイエットや糖尿病治療だけでなく、幅広い疾患への効果が期待されているからだ。

このあたり、9月21日に発表されたイギリスの『ランセット』誌の記事がわかりやすい。

糖尿病や肥満に効くだけじゃない

GLP-1受容体作動薬の研究開発に、前出の3人が果たした役割を紹介したあと、後半は今後の展望が記されている。そしてそのなかには「心臓保護効果は十分に確立されていて、慢性腎疾患、脂肪肝、神経変性疾患、依存症の研究が進行中」と紹介されている。

GLP-1受容体作動薬の効用は糖尿病や減量だけでなく、さまざまな疾患に及ぶというのだ。

心疾患に関しては、すでに多数の論文が発表されている。

2016年7月にアメリカの『ニューイングランド医学誌』に掲載された「LEADER試験」と呼ばれる研究では、心血管疾患(心筋梗塞など)のリスクが高い糖尿病患者9340人を、リラグルチド投与群とプラセボ(偽薬)投与群に無作為に割り付け、死亡、心血管疾患、脳血管障害(脳梗塞など)の発症頻度を比較した。

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