破竹の勢いを見せる「インド」は日本を超えるのか 市場価値は高まる一方、埋まらない貧富の格差
東洋経済オンライン / 2024年10月7日 17時0分
ベンガルール市内では、医療施設のビルの道路に面した1階に貼られたモディ首相のポスターの上に、本人の目を隠すような形で新聞紙が貼られていたのを見かけた。明らかにモディ首相に対する不満を表すものだった。
しかしそうしたモディへの反発運動や、市民の抗議の意思表示を見ることは珍しい。農業政策に対する抗議デモなどはあっても批判の矛先がモディ個人の資質に向けられることは少ない。
モディ首相の顔はバスの待合所から道路脇の広告まで、街中で目にすることができる。そしてモディの顔は国内だけでなく、外交的にも広く拡散した。2023年9月のG20サミットで、彼は新興経済を代表して前向きな発展の道筋を示す象徴として自らを演出した。
モディは国家権力を利用して経済改革を実行してきた。交通や輸送のインフラが寸断されている問題を解決するために、大胆な国土強靭化を打ち出してきた。国土改造は人々に安堵感を与え、今も変化を続けている。
インド経済のゆがみ
一方で、インド経済のゆがみが見られたのは、政府との結びつきが強い少数の企業家への富の集中である。ゴータム・アダニはインド企業の富の集中とリスクをわかりやすい例として示した。アダニは、2022年にイーロン・マスクに次ぐ世界で2番目に裕福な人物として突然リストに登場したインドの大富豪だ。
それまで彼の名前を知る人はほとんどいなかったが、アダニ・グループは事実上の政府の物流部門となり、港や高速道路、橋や太陽光発電施設をそれまでになかったスピードで建設した。
しかしアダニは詐欺容疑で告発され、グループの時価総額は一時1500億ドル減少した。その後、容疑を否定したアダニは失った金の大半を取り戻したが、少数のトップ層が巨大な影響力を蓄えられるというモディ政権のリスクを示す形となった。
2014年からのモディの10年は、インドを「経済大国」への軌道に乗せることにとりあえずは成功した期間であった。モディの言葉通りの「よき時代」だったのかもしれない。
しかしその「経済大国」が何を意味するかは、これから決まることになる。GDPを押しあげればよいのか、日本やドイツを抜けば成功といえるのか、国民の多くが貧しくあり続ける国が経済大国と呼べるのか。
インドがたどる道筋はさらに深く大局的に見ていかなければならない。
広瀬 公巳:国際ジャーナリスト
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