米大統領選挙をも動かす「ビットコインマネー」 トランプ氏が"仮想通貨大国"にすると宣言
東洋経済オンライン / 2024年10月7日 8時0分
仮想通貨運用会社のグレイスケールによれば、有権者の3人に1人が、大統領選候補者の仮想通貨に対するスタンスを考慮して投票すると答えている。仮想通貨に好意的なスタンスを示すことで、トランプは選挙戦における競争優位性を上げようとしている。
選挙予算の獲得でも効果は大きい。今年7月に業界への支持を表明する前後、暗号資産交換所のジェミナイを経営するウィンクルボス兄弟それぞれから15.47BTCずつ(合計約2.6億円、BTC=ビットコインの単位)、デジタル資産セキュリティー会社・ビットゴーのマイク・ベルシュCEOから5万ドル(約700万円)の献金を受け取っている。
もう1つの狙いは、政策面だ。トランプはビットコインマイニング(採掘)を全面的に支持することで、雇用の創出や電力網の強化を目指し、米国のエネルギー、ひいては産業の競争力を引き上げようとしている。ビットコインのマイニングについては、莫大な電力を消費することが知られているが、その需要によってエネルギー産業を活性化させる狙いがある。トランプは化石燃料擁護派でもあり、これによって業界からの支持を得ようとする思惑も見え隠れする。
他方、財政の面ではビットコインを国の戦略的準備資産とすることで財政のスリム化を狙う。米国の政府債務はコロナショックを経てたった4年で50%ほど膨れ上がり、現在は35兆ドル(約5000兆円)となった。昨年には米大手格付け会社が米国債の格付けを引き下げるなど、債務は大きな問題だ。
トランプの経済政策は減税が要になっており、財政の悪化は避けられない。そこで、「無国籍通貨」や「デジタルゴールド」とも称されるビットコインを政府の準備資産として保有し、財政悪化をオフセット(相殺)しようという考えだ。ビットコインの高いボラティリティーを考慮すれば、一見安直かつハイリスクな政策と思えるが、トランプは8月に行われたフォックス・ニュースのインタビューで、米政府が抱える35兆ドルの債務を「クリプトチェック(小切手)」で返済できるかもしれないと口にした。
また、今のところ政府として追加のビットコイン購入は公言しておらず、あくまで米政府がこれまで金融犯罪事件で押収した約21万BTC(約1.7兆円)を売却せずに保有し続ける計画だ。
仮にトランプが再選されれば、米国におけるビットコインマイニングが活性化され、ビットコインのネットワークはより強靭なものとなるだろう。世界一の経済大国がビットコインを準備資産として保有するとなれば、アセットとしての格をさらに引き上げる材料となりうる。暗号資産業界としては歓迎すべき流れとなる。
民主党にも変化の兆し
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