生成AI導入を「コンサルに丸投げ」する会社の盲点 「なんでもできる」チャットボットの幻想とは
東洋経済オンライン / 2024年10月7日 15時0分
2022年11月にChatGPTがリリースされてから、劇的なスピードで進化してきた生成AIも、いよいよ本格的な社会実装のフェーズへ。大手を中心に企業における生成AI活用も進みつつありますが、従来のシステム導入と同じように考えていては、失敗に終わってしまうケースも少なくありません。
『ビジネスに魔法をかける 生成AI導入大全』の著者で、国内外トップ企業のAI導入を指南する元東大大学院松尾研究室のAIコンサル・上田雄登氏が、企業の生成AI導入が失敗してしまう主な理由を3つ解説します。
生成AIは「なんでもできる」わけではない
企業の生成AI導入が失敗してしまう理由の1つ目は、「生成AIは万能ではない」ことを理解しておらず、過度な期待を抱いてしまうことです。
生成AIの登場により、ビジネスの世界に大きな変革の波が押し寄せています。しかし、「インパクトの大きさ」と「万能性」とはイコールではないことを、冷静に理解しておく必要があります。何ができて、何ができないのか。生成AIはどういったことに向いていて、どういったことに向いていないのか。そこをしっかり見極めてこそ、実際のビジネスの現場にその技術を具体的に活用していくことができます。
たとえば、社内問い合わせ業務に生成AIを導入する際、「なんでも対応できるチャットボット」を目指すのは現実的ではありません。
社内データを参照しながら、あらゆる質問に回答できるチャットボットを作るというサービスを見聞きしたことがある方もいるでしょう。しかし、現実の業務であらゆる質問に対して的確に答えられる人間というのは、残念ながら存在しません。皆さんの周りでもきっと同じでしょう。それを生成AIに求めるのは、あまりにも非現実的です。
私自身、これまで多くの企業から相談を受けてきましたが、汎用的なチャットボットを構築しようとして失敗したという事例を多数見聞きしました。この失敗の原因の一つに、生成AIの検索性能の限界があります。生成AIは膨大な情報を保持していても、適切な情報を検索することが非常に難しいのです。結局のところ、あらゆる質問に対応できるチャットボットを作ることは非常に難しく、多くの場合は期待された効果を得られないまま終わってしまうのです。
生成AIを効果的に活用するためには、インプットする問い合わせの範囲を限定し、生成AIが的確な情報から回答をできるようにすることが重要です。たとえ単純な業務であっても、その会社や部署特有の「やり方」が存在しているはずです。この「やり方」こそが、生成AIに教えるべき重要な情報なのです。
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