川崎重工、「相次ぐ不正」で業界3位に凋落の危機 防衛の裏金問題と舶用エンジン不正に社長陳謝
東洋経済オンライン / 2024年10月7日 9時0分
前出の社員は「重大事件が起きても問題を表に出さない事業部ごとの風通しの悪さは実際にある」と認める。一方で「現場だけでなく、経営陣や本社部門にどこまで危機意識や説明姿勢があるのかも疑問だ」と指摘する。
実際、個々の不正や不祥事は現場の問題であったにしろ、それが頻発する中で経営としての危機意識は伝わってこない。
経営トップの説明対応が遅すぎる
防衛事業の裏金問題については、7月3日に「第201期 有価証券報告書に記載の税務調査における指摘事項について」と題する紙1枚のプレスリリースを公表したのみで、本文を読まなければその内容はわからない。8月6日に決算会見があったが、山本克也副社長が橋本社長からのメッセージを代読する形で謝罪したのみだ。
舶用エンジンのデータ改ざんを公表したのは8月21日。それから1カ月以上、公の場での説明も謝罪もないまま。中間調査報告書を国交省に提出した9月27日、ようやく開いた記者会見で橋本社長自身が防衛事業の裏金事件と舶用エンジン不正の謝罪と説明を行った。同業の幹部からも「さすがに説明対応が遅かったのではないか」との声が上がる。
もっとも、不正は他社でも起きている。舶用エンジンの燃費データ改ざんは、今年4月にIHIの子会社で、7月には日立造船の子会社2社でも発覚している。IHIは過去にも航空機エンジン整備不正があった。自動車、電機、素材などあらゆる業界で何らかの不正が判明している。
だから仕方がない――ということはない。
川崎重工の足元の業績は好調だ。
重工大手は円安や防衛予算増などの追い風を受けている。2025年3月期の業績予想は、各社が重視する事業利益ベース(IHIは営業利益)で見ると、三菱重工業が3500億円、川崎重工が1300億円、IHIが1100億円といずれも過去最高益を見込む。
今年5月9日の2024年3月期決算の説明会では、橋本社長は「まだまだ成長がスタートした段階。決して浮かれずに成長につなげていく」と意気揚々と語っていた。決算発表を挟んで川崎重工の株価は14%も上昇した。
しかし、防衛事業の裏金問題発覚後は株価が下落。8月に発表した第1四半期(2024年4~6月期)の事業利益が169億円と、通期の1300億円計画の進捗率が低かったことを契機に、時価総額でIHIに逆転された。
業界では三菱重工、川崎重工、IHIという序列だったが、時価総額では川崎重工が3位に転落してしまった。株価の割高・割安感を示すPBR(株価純資産倍率)は1.58倍。1倍達成に苦戦する企業が多いことを考えれば高い評価を得られているが、三菱重工の3.2倍、IHIの2.89倍と比べると大きく見劣りする。
信頼低下やさらなる不正発覚が懸念
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