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発達障害の子どもとの対話で大人が陥る落とし穴 そのコミュニケーションは大人が楽になるだけでは?

東洋経済オンライン / 2024年10月8日 19時0分

コミュニケーションは相互交渉です(写真:ノンタン/PIXTA)

発達神経心理を主に発信を続ける立命館大学教授の川﨑聡大教授は、「発達障害特性のある子どもとのコミュニケーションには、大人が陥りがちな落とし穴がある」と指摘します。本稿は川﨑氏の新著『発達障害の子どもに伝わることば』から一部抜粋のうえ、注意すべき点をご紹介します。

発達障害だから特別というわけではない

発達障害の人はコミュニケーションがとりづらいのか、(もしそうだとすると)それはいったい誰の問題なのか。

「コミュニケーション」をインターネットで検索すると「社会生活を営む人間が互いに意思や感情、思考を伝達し合うこと。言語・文字・身振りなどを媒介として行われる。」(デジタル大辞泉)といった結果が返ってきます。

つまり、コミュニケーションは相互交渉(相手あってのもの)であって、仮にやりとりがうまくいかない状況があれば、伝える側、受け取る側、コミュニケーションの場面(環境)すべてに改善の余地があるわけです。

コミュニケーションはすべての人にとって楽しいものでないといけないですし、そのとり方や様式は人によって多様であるべきです。ただ、コミュニケーションに求めるものはその人その人によって異なりますし、こちらが押し付けるものではありません。

距離感の近い人もいれば遠い人もいるし、積極的にことばでのやりとりを好む人もいればその逆も。この問題は万人共通で、発達障害だから特別ということではありません。

コミュニケーションは教えるもの?

以前、とある支援学校での自閉症スペクトラム障害への生徒に対する取り組みについて、お話をうかがう機会がありました。生徒たちの将来的な校外での実習に備えて、仕事で実施した内容を上司に報告するスキルを身につけるために、作業学習場面で実施内容を先生に報告するというコミュニケーション行動を取り入れたそうです。

その支援学校の先生は、「すごいね! がんばったね!」と言語賞賛をガンガン取り入れて(ちょっとしつこいくらいに)生徒にフィードバックしていました。そうしたほうが生徒たちが喜んで報告してくれて、行動の定着につながると考えたわけですね。

結果、実際何人かの生徒は目論見通りとなりましたが、何人かは真逆の結果となりました。

この真逆の結果を示した生徒に対してこの先生が素敵だったのは、「こいつは報告できないやつ!」とレッテルを貼るようなことはせずに、「もしかして、私の考え(絵に描いたように褒めた方が本人が喜んで報告する)が当てはまらなかったのかな?」と考えて、「すごいね!」とあからさまに褒めるのをやめて、「わかったよ」とあっさりかつ淡々と報告を受け取り、その後のレクリエーションにするっと移動させるようにしたことです。

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