「隣はヒズボラ」パレスチナ難民キャンプのヤバさ 9月にレバノン・ベイルート襲った空爆のその後
東洋経済オンライン / 2024年10月9日 9時0分
何より避難したからといって、安全が保障されたわけではない。
現在、イスラエルによって攻撃対象とされていない主要都市は、北部にある同国第2の都市トリポリのみ。パレスチナ難民の大多数は攻撃に巻き込まれるリスクを回避するため、北部への避難行動をとっているものの、今後も各地での空爆が継続し、地上侵攻が本格化した場合、食料や生活非必需品の調達など、生活のさまざまな面で影響は必至である。
政権の弾圧・処罰覚悟で本国へ
ベイルート周辺に居住・駐留していたシリア国籍者のなかには、本国に戻る動きもあるという。シリア難民にとって本国への帰還は、政権からの弾圧や処罰を受けるという危険もはらむ。この動向はレバノンにおける事態の深刻さを物語っているといえるだろう。
(キャンプ内の)自宅にいつ戻る予定か尋ねたところ、クルドさんは「それはわからない。起こるべき運命にあることが起こるだろう」と淡々と述べた。これは、彼女が「あらゆる出来事を、ありのままに受け止める覚悟をしている」という意味であり、「もし神が望んだならば」というアラブの考えにも基づいている。
そのうえで、筆者が開発分野の仕事に従事していることから、「あなたは(分断ではなく)愛と平和を普及することに努めなさい」と訴えた。
国際機関に勤めるイズラさん(34、仮名)は、「ひとまず空爆のない地域に退避したが、事態の悪化を想定し、常にプランB、プランCを用意しておかなければいけない」と話し、依然、神経を張り詰めた状態であることを明かした。
ひとまずベイルート首都圏からの避難を完了して知人宅に親戚・家族と身を寄せているが、必要に応じて再度移動する心積もりだという。
4カ月前に第2子を出産したばかりの彼女は、生後間もない赤ん坊を含む2児を連れての避難を余儀なくされている。わが子の命を守るという使命感に突き動かされ、一刻も早い退避を優先させたため、貴重品を含む多くの私物は置いてきたという。彼女は「子どもたちにこれ(紛争)を引き継がせるわけにはいかない」と話した。
「早く終息することを願っている」という彼女の言葉とは裏腹に、これまで数えきれないほどの不公正を目の当たりにしてきたレバノンの地に住む人々は、どこか習慣的に事態を見ているように感じられる。覚悟というよりも、あきらめに近いのかもしれない。
9月27日以降も継続する空爆
10月7日時点でも空爆は継続しており、人々は依然として南方から飛来する脅威にさらされている。現代に生きる一市民として、彼女たちの言葉を重く受け止め、私たちが果たすべく役割が何なのか考え、行動していかなければならないと思う。
村中 千廣:フリーライター
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