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気づけば「自分に厳しい道を選ぶ人」が陥る思考 マラソンに挑戦しながら、聞こえてきた心の声

東洋経済オンライン / 2024年10月10日 16時30分

かなりの痛みで、状況は厳しくなるばかりだった。同行してくれていたミーナ・ホルダーはイギリス人の学校教師で、彼女自身もニュージーランドを縦断する有名な長距離トレイル「テ・アラロア」を走ったことのあるウルトラランナーだ。

私の信頼する仲間として、コーチとして、そして無資格ながら心理カウンセラーとしての役目を担いながら、日々の雑務に対応してくれ、それまでは私の進み具合をとても楽観的に見てくれていた。

ところがこの12日目、彼女の表情に心配の色が見えた。ミーナは私の足の親指にテーピングをし、食事を用意し、私に同行してニュージーランドの西側をゆっくりと北上する車列を先導するバンを運転してくれていた。

この旅の間じゅう、道路が私の道連れだった。ともに過ごす時間が数分から数時間になり、数日になり、さらに何週間にもなるにつれて、私は道路とかなり親密な関係を築いた。とはいえ、対話はたいてい一方的だった。

道路が際限なく話しつづけるのに、私はだいたい黙っていたかったからだ。

私の過去、未来、そして現在についての質問を道路が投げかけてくる。私のさまざまな過ちや間違いを掘り起こし、過去の判断ミスや失敗を振り返るように誘う。

それでもときどきは、まるで別世界から来た賢者のように、私の心理パターンや潜在意識に関わる啓示をご褒美のように与えてくれる。これが巡礼の旅というものだろう──何度も試練に見舞われながらも、じっくりと考え、より深いレベルで自分自身を知るための時間がたっぷりある。

自分に厳しくするほうが簡単

自分のアイデンティティにかかったベールがしだいに薄くなるにつれて、いつもの思い込みを抜け出し、本当の心の声が聞こえてくるのだ。

自分に厳しくするほうが簡単だった。

12日目にも、そういう瞬間がやってきた。あるとき道路が(それまではほぼずっと、口数少なく感じよく伴走してくれていたのだが)突然、言いたいことを言おうと思ったらしく、「あそこの次のカーブが見える?」と聞いてきた。

「きみはここまでずっと、好奇心と勇気で次々とカーブを曲がってきた。だけどね、曲がっても曲がっても、必ずまだ走る道があるんだ。次のカーブの後は、また次のカーブがある。ずっと永遠に走りつづけて、探しつづけることができると思っているわけ?」

少し間を置いてから、私の(道路になりすました)内なる声はこう続けた。「痛みが終わるのは、それをきみが終わらせたときだ」。その瞬間、それまでの人生のさまざまな(とくに恋愛にかかわる)場面が走馬灯のように頭に浮かんだ。そしてハッと気づいた。たった今聞こえた自分の潜在意識からのメッセージが、私がずっと探していた答えへのカギを握っているのだと。

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