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芸術の秋、「和×モダン」の奥深さ堪能する名建築 語りたくなる意匠や背景、あの建築祭にも注目

東洋経済オンライン / 2024年10月12日 9時0分

仏教発祥の地であるインドのデザインはもちろん、本堂内に入る手前に並ぶエジプト風の柱やステンドグラス、床のアラベスク文様風のタイルなど、世界各地の意匠が取り混ぜられている。

本堂の正面に翼を持った獅子がいるのをはじめ、牛や馬、象、孔雀、猿など、13種もの動物像が階段まわりに隠れているのも楽しい。これらが必ずしも仏教説話に由来するものでないところも、近代的な寺院らしい。

そして、本堂内部は和風だ。鉄筋コンクリートでつくった和風の梁の上に、さらに木造の組物を架けて、浄土真宗本願寺派の正統なつくりが再現されている。

築地本願寺を設計したのは、伊東忠太という人物だ。夏目漱石や正岡子規らと同じ1867年に生まれ、帝国大学(現・東京大学)で学び、日本で初めて建築史を本格的に研究した。母校の教授として多くの後進を育成し、1943年には建築界で初の文化勲章を受賞。歴史に名を残す学者でありながら、個性的な建築を設計したことでも知られる。

築地本願寺に見られる多くの動物像や世界各地のデザインの折衷は、京都の「本願寺伝道院」(1912年竣工)、東京の「一橋大学兼松講堂」(1927年竣工)や「東京都復興記念館」(1931年竣工)といったほかの伊東忠太の作品にも共通する特徴だ。日本に建つべき建築とは何かを考え続けた結果、伊東忠太はこのような設計手法に行き着いた。これも1つの「和×モダン」なのである。

築地本願寺は、1923年の関東大震災によって江戸時代の建物が失われた後、モダンボーイ、モダンガールが闊歩する街に現れた。完成から90年後の今、いっそうグローバルな人々が行き交う場となっている。

「東京国立博物館本館」と「銀座のシンボル」の共通点

さて、場所を上野に移して見ていきたい。

なぜ、上野か。理由の1つは、上野公園にさまざまな文化的な建築が集積していることだ。「和×モダン」の建築だけでも三者三様で、それぞれに時代を映している。

例えば、上野公園の噴水の向こうに建つ「東京国立博物館本館」(1937年竣工)は、瓦の屋根が印象的だ。博物館や美術館は西洋の社会のものなので、明治時代からずっと洋風で建てられてきた。そこに和を組み込もうという試みである。

デザインを手がけたのは、渡辺仁。立派な時計塔を備えた銀座のシンボル「セイコーハウス銀座」(1932年竣工)を設計した建築家である。東京国立博物館は東洋風、セイコーハウス銀座は西洋風と対照的だが、どちらも皆の視線を受け止められるだけの堂々としたデザインを、巧みなバランス感覚でまとめ上げている。

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