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国際映画祭に見た、映画祭が「脱映画」を図る未来 釜山国際映画祭では、動画配信作品が勢い増す

東洋経済オンライン / 2024年10月12日 13時0分

冒頭でも述べた通り、OTTとはネットを介した動画配信のこと。本アワードは6回目を迎え、日本からは西島秀俊も審査員として参加した。日本作品は5本、日本人俳優・スタッフが5人ノミネート。仁村紗和や、チェ・ジョンヒョプ、三吉彩花らが、それぞれ受賞した。

また、日本以外にも、アジアの人気ドラマのスターたちが数多く出席。その華やかさは映画祭イベントをしのぐほどになっていた。

映画祭全体をみても、OTTの1つであるNetflix作品が大きな存在感を放っていた。

映画祭会期前半は、Netflixロゴの入った上着を着た多くの同社スタッフが会場のあちこちで忙しく動き回っている姿が印象に残ったほど。まさにNetflixが映画祭を席巻していたのだ。

オープニング作品はNetflix作品の『戦と乱』だったほか、映画祭イベントとして「Netflix クリエイティブ・アジア・フォーラム」も開催された。Netflixオリジナル作品では、日本からは『さよならのつづき』の有村架純、坂口健太郎、黒崎博監督が参加。現地のファンとの交流を持ちながら、映画祭を盛り上げた。

映画が映像メディアの主役の座から退いて久しい昨今、グローバルプラットフォームの配信ドラマは、いまやテレビドラマと並んで世の中的な話題性を有するコンテンツになっている。

いずれこうしたテレビやOTTドラマをメインにするアワードやイベントが映画祭のメインに据えられる未来がくるかもしれない。それはそう遠くないことのようにも思わされた。

一方で、こうした国内外を広くカバーするOTTのメジャーなアワードは、日本にはまだない。エンターテインメントへの熱量が高い国民性の韓国ならではのビジネスの最先端を切り開く姿勢と、アジアのリーダーを自負する強力な推進力があってのことなのだろう。それを日本はどう見るか。

来年の同アワードは、『不適切にもほどがある!』(TBS)や『地面師たち』『極悪女王』(ともにNetflix)が授賞式をにぎわせているかもしれない。

それが楽しみな一方、アジアでも随一のクリエイティブと制作力を誇る日本にも、こうしたアワードやイベントがあってもいいと強く感じさせられる。それはアジアにおけるシーンのさらなる発展につながるのではないだろうか。

映画好きが多い韓国だからこその動き

同映画祭は2021年からオンスクリーン部門を設け、OTTの配信ドラマも上映してきた。こうした流れもありながら、今年はオープニング作品に劇場映画ではなくOTTであるNetflixの配信作品を選定し、それが波紋も呼んだ。

この規模の映画祭での断行は異例であり、驚きと同時に映画を愛する韓国だからこその先鋭的な試行であることも感じられる。それは、この先に来るべき時代の流れを見据えた結果なのだ。“映画祭”という名前や映画業界とのしがらみよりも、エンターテインメントの未来を観客本位で優先させた結論なのだろう。

パク・グァンス新理事長は会見で「従来の映画祭フォーマットでの開催は今年が最後」と話していた。来年の節目となる第30回がどのような形で開催されるのか楽しみだ。

OTT作品の扱いが劇場映画と完全に並列になるのか、もしくは新たなカテゴリーやアワードが生まれるのか、といったあたりが予想されるが、まったく新しい“祭”の形態が生まれるのかもしれない。アジアのエンターテインメントの最先端を切り開く同映画祭の30周年を世界が注目するだろう。

武井 保之:ライター

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