石破政権下では日本の経済成長を期待できない 「前言撤回」をしても「根本的な疑念」は拭えず
東洋経済オンライン / 2024年10月14日 22時0分
もちろん、総裁選挙の決選投票で勝利するためには、菅義偉元首相、岸田文雄前首相の支持を得る必要があった。特に、アベノミクス実現を支えてきた菅元首相らの経済政策の考えは強固で、これに石破首相が従ったのだろう。安倍元首相との関係が深かった加藤勝信氏が財務大臣に起用されたことも、安倍政権以来の財政金融政策運営の根幹がかろうじて続いていることを示唆している。
石破首相は10 月4日の閣議において、「総合経済対策」の策定を指示した際に、「デフレからの脱却を確実なものとするため、3年間の集中的な取り組みが必要」との考えを示した。この文言は、政府の経済認識と歩調をあわせて、金融政策を運営することを日銀に要求する意味合いがある。
筆者は、先に紹介した石破首相の新著の内容を踏まえて、同氏が首相となれば、金融財政政策が安倍政権以前へ逆戻りするリスクを警戒していた。
ただ、石破首相本人の経済政策に対する考えの根幹が弱く、「反安倍」の政策姿勢を示すために政治的な方便だった、ということなのかもしれない。また、すでに自らの派閥が弱体化していたこともあり、石破首相の側近には、マクロ経済政策を提唱するブレーンがいないので、菅、岸田両氏の影響が混在しており、それゆえにわかりづらいのかもしれない。
石破政権下での経済政策の転換への警戒が一転して和らいだだけでなく、アメリカ9月雇用統計の上振れ(10月4日)もあいまって、ドル円相場は直近では1ドル=149円台まで円安が進み、石破政権への疑念は低下している。
「減税」や「規制緩和」などの成長政策が期待できない
だが楽観は禁物だろう。まずは、岸田政権の政策が続くとすれば、経済成長を高めるために財政政策を機動的に発動する対応は期待できない。筆者は予想していないものの、仮に再度円安が進むことになれば、今度は金融引き締めへの要求が、よりあからさまに行われるのではないか。
また、石破政権の経済政策は独自色に乏しいのだが、地方創生と防災を重視している。具体的には、地方創生の交付金を当初予算ベースで倍増、また、専任の大臣も念頭に、防災庁の設置に向けた準備を進めるとした。こうした政策が実現すれば、長期的な経済成長押し下げ要因になると筆者は考えている。
なぜなら、地方政府への補助金拡大は、その分中央政府の支出が増えることになるが、地方への所得分配強化は市場メカニズムを阻害する副作用のほうが大きいと考えるからだ。また、防災庁の設置は、「霞ヶ関の仕事や権益」は増えるが、新たな組織を作るからといって、政策の実効性は必ずしも高まるとは限らない。こども家庭庁の創設(2023年4月)もそうだが、行政組織の肥大化を理由に将来の増税が行われる可能性が高まり、経済成長を下押しするだろう。
この記事に関連するニュース
-
米金融関係者が石破政権に"熱望"していること 株高と経済復活のカギを握るのはなんなのか
東洋経済オンライン / 2024年10月9日 9時0分
-
お金は知っている 石破首相「成長派」への変身は本物か 岸田前政権の戦略継承、財政出動へ官僚の圧力はね返せるか 長年、反アベノミクスの言動も
zakzak by夕刊フジ / 2024年10月4日 6時30分
-
石破政権「金融緩和に反対」姿勢は続く? 日本経済が「ねっとりした」成長になりそうな理由
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月2日 17時0分
-
「石破新政権誕生」で、日本株は停滞しかねない 「日本経済への疑念」は簡単に収まりそうにない
東洋経済オンライン / 2024年9月27日 22時0分
-
「小泉進次郎首相」なら日本株は上昇するだろうか 自民党総裁選で最も株価が上がりそうな候補は
東洋経済オンライン / 2024年9月16日 9時30分
ランキング
-
1ノーベル経済学賞に米MITのダロン・アセモグル教授ら3氏
読売新聞 / 2024年10月14日 19時6分
-
2中国輸出入の伸び鈍化=日本向けは7%減―9月
時事通信 / 2024年10月14日 19時56分
-
3住宅ローンで「2兆円目指す」 住信SBIネット銀はなぜ、大躍進しているのか?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月14日 14時42分
-
4アメリカ大統領選が日本の金融市場へ与える影響で注目すべき「3つのポイント」…円安はどうなる?
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年10月14日 7時0分
-
5パリ自動車ショー開幕=活況も、日本大手は不在
時事通信 / 2024年10月14日 18時58分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください