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「日本の観光が危うい」と懸念される2+1要素 観光学者が感じている「観光消滅」へ足音

東洋経済オンライン / 2024年10月15日 11時40分

この8月の京都の主なホテルの客室稼働率は72.8%で、コロナ前の2019年に比べて10%以上の減少となっている(京都市観光協会調べ)。

8月は、南海トラフ地震の臨時情報が出たり、台風の影響で新幹線が何日も前から運休を決めたりするなど、旅行そのものをキャンセルした人が多かった影響もあるが、この夏の暑さは京都を歩く意欲を失せさせるに十分なインパクトがあったと思われる。

名産地で名産が食べられない事態にも

そのほか、海水浴客が全国的に減少しているのも、砂浜が暑すぎて海水浴どころではない状況があったようだし、暑さだけでなく日本近海の海水温の高まりにより、台風の勢力が衰えないまま日本に接近・上陸したり、思わぬ迷走をしたりするなど、安定した夏空が続くこれまでの夏とは、様相を異にしていることもたしかである。

また、気候や海水温の変化が農作物の生育状況に影響を与えたり、漁港に水揚げされる水産物の減少、魚種の変化などをもたらしたりする事例も、各地で報告されている。そしてそれらは、観光の大きな目的である「食」にも影響を及ぼす。

ブリ料理が名物の港町に出かけてもブリが提供されず、新鮮なサンマや秋鮭を目当てに旅を計画しても、それを味わうことができない。そんな事例が各地で報告されている。

こうした地球温暖化の影響は世界各地で報告されている中で、日本では地震や水害も頻発しており、当然ながら被災地は観光どころではなくなる。

元日に大きな地震が発生し、9月には水害にも見舞われた能登半島が観光客を受け入れるのは、しばらく難しいだろう。災害による観光へのマイナスの影響は、計り知れない。

バス路線の減便・廃止に加えて…

2つ目の観光を消滅させかねない状況は、「人手不足」である。この連載で昨年「高速バス『運転手不足』で路線廃止が続く深刻度」と題し、北海道をはじめ各地で高速バス/長距離バス路線の廃止や運行本数が削減される状況について触れた。『観光消滅』でもこの点を取り上げている。

運転士が足りないバス会社は、地元の通勤通学の足を守るため、路線の維持に努める一方、観光などに利用される高速バスを減便するようになってきた。特に、今年になって富山から各地を結ぶ高速バスは、かなり減便・廃止されている。バスの捻出ができないために、修学旅行に影響が出たというケースもあった。

バス業界だけでなく、鉄道や航空機といった運輸業は、全般に運転士不足となっており、空港では地上職や管制官が足りない地域もある。

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