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スタートアップは経済成長に寄与しているのか 「GAFAMを日本から生み出す」という幻想を捨てよ

東洋経済オンライン / 2024年10月16日 13時0分

スタートアップという言葉に、多くの人がポジティブな印象を持っているのではないだろうか(写真:metamorworks/PIXTA)

学士会YELL主催によるミニプレゼン会にて、『Z世代化する社会』の著者・舟津昌平氏らによる出版記念シンポジウムが行われた。

本記事では、『スタートアップとは何か』を上梓した関西学院大学経済学部教授の加藤雅俊氏による講演をベースに、スタートアップへの誤解とその実像を解説する。

スタートアップへのポジティブ・バイアス

スタートアップには、どのようなイメージをお持ちだろうか。

そもそも、スタートアップという言葉を聞き慣れない人もいるだろうが、多くの人がポジティブな印象を持っているのではないだろうか。マクロ的な観点で見れば、イノベーションを生み出す経済成長のドライバーとして期待されているし、起業家のキラキラしたサクセス・ストーリーは非常に華やかなものだ。

ただ、研究者としてはポジティブな面ばかりが注目されていることに違和感を持っている。スタートアップ支援のために、2022年度には1兆円という莫大な公的資金が投入されているのだから、その結果を検証し、より効果的な支援を考えるのは当然のことだ。そしてそれは、利害関係者ではない研究者だからこそ、客観的に伝えられることもある。これから述べることは、批判めいた論調に聞こえるかもしれないが、あくまで、スタートアップ支援を適切に前に進めるための提言として聞いていただきたい。

まず、なぜ政府がこれだけスタートアップ支援を推し進めているのだろうか。下記は、政府(経済産業省)がよく使うグラフである。日本株(TOPIX)とGAFAMを除いたアメリカ株(S&P500)、そしてGAFAMの株価の推移を、2013年9月を100として表したもので、GAFAMがなければ、日本とアメリカの間でパフォーマンスの成長率はほとんど変わらないとの主張だ。つまり、GAFAMが登場したことでアメリカ経済は潤っている、だから日本もこうした企業を生み出す必要がある、というわけだ。

しかし、それによってスタートアップ支援の必要性を説くのは無理があるように思う。というのは、MicrosoftやAppleは、創業からすでに50年ほど経過しているし、GoogleやAmazonは30年、Facebookも20年ほど経過している。つまり、近年のGAFAMの成長は、大企業がさらなる拡大を遂げたにすぎないのである。支配的企業による過度な集中をさらに進めることには異論があるはずだし、何よりこれは長年繰り広げられた「競争」の結果であり、アメリカ政府が作り上げたものでも何でもない。政府がこういった支配的企業を作り上げることを意図しているかのような誤解さえ与えかねない。

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