1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「学者は世間知らず」とはどういう意味なのか 宮廷道化師たる学者が果たすべき3つの役割

東洋経済オンライン / 2024年10月18日 9時0分

学者が書いた本が気に食わなかったとき、その中身を丁寧に批判したり、何がおかしくてどうすべきだったのか自分の言葉で紡ぎ、そのうえ同意を得る、という手順をすっ飛ばして、「世間知らず」だの属性攻撃してしまえば、簡単に精神的優位に立てる(ように思い込む)し、一定の賛同も得やすいだろう。

だが属性攻撃の意味は、それだけと言えば、それだけである。「世間知らず」という批判は、ふわっとした悪意を表現できても、議論を発展させるような論点を示すことは決してできてはいない。

もっともネットで過激な発信を行う人々は、他者を傷つけることが目的化している可能性もあるので、目的は果たしているかもしれない。ただ、拙著にひきつけて言っておくと、「Z世代」はそんな構造に確実に触れている。つまり、何か発信をした人が、匿名の人々から属性攻撃を受けるという場面に日々接している。

そういう悲惨な光景をみた若者が、リスクを取って発信しようと思えるだろうか。何か述べればすぐ誰かが属性で叩きに来る社会で、安全圏で引きこもろうとするのは当然である。

「最近の若者は自分を出さない」という懸念をよく聞く。それはおそらく事実で、そして構造的な原因は、周囲の大人がつくっているかもしれない。そんな話が気になるようなら、ぜひ拙著をご一読いただきたい。

学者は世間知らずに「見える」だけかもしれない

さて、話を戻すと、「学者は世間知らず」という批判が一定程度正しいとしても、学者に期待される役割ゆえに世間知らずに「見える」という側面もあるのではないだろうか。

学者の社会的な役割は、「宮廷道化師」に例えることができる。宮廷道化師という耳慣れない言葉について知りたければ、「TED」というプレゼン動画で解説されているので、詳しくはそちらを見てほしいが、簡潔に説明すると以下のとおりである。

中世ヨーロッパでは、王族がエンターテイナーとして道化師を雇うことがあった。たとえば、ヘンリー2世に仕えた宮廷道化師・ローランドは、王や権力者の前で、ジャンプをしながら口笛とおならを同時にするという(実にくだらない)パフォーマンスを行っていたという記録が残っている。

そして、そうした道化師らは、宮廷の大事な意思決定に影響を及ぼすこともあったそうだ。そんなふざけたやつを意思決定に参加させるのは非常識なようにも思えるが、実は理にかなっている部分もある。

つまり、当時の王様は絶対的な存在であったがゆえに、なかなか外から意見を言いづらい構造にあった。権威を保ち政権を安定させるためには、王様にそうそう恥をかかせてはいけない。そんな状況で、周りの人たちがわかっていても言えないことや今さら言えないことを、宮廷道化師は横槍を入れるように茶化しながらも本質をつく役割を求められていたのである。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください