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「元科学者で保育士」夫婦が作る異色保育園の日常 アラフォーで転身、オルタナティブスクールも運営

東洋経済オンライン / 2024年10月18日 11時0分

2人とも東京工業大学(現東京科学大学)で博士号を取得したため科学的な知識や経験が豊富。2人の特長を生かす形にして自然体験活動をさらに強化する。

「横瀬町など秩父周辺地域は山や森、川など自然がたくさん残っています。一日中森で遊んだり、川で釣りをしたりして過ごすような日をたくさん作りたい。自然の中こそ学びの場であり、いろいろな発見の場です。

僕らは地球を守るという言葉はあまり好きではありません。守るというより、より本質的に地球への愛が芽生える形にしたい。子どもの頃から自然を好きになってもらうことが最も重要です」(繁彦さん)。

科学者時代よりも幅広い論文を読んでいる

夏休みに「ちっぽけツアー」という自然体験ツアーも企画している。地球惑星科学の最新の論文などを見ながら、大学生レベルの話を小学生向けに説明している。

「科学者時代よりも幅広い論文を読んでいる。むしろかみ砕いて説明するのが大変。地球の46億年の歴史やスケールを感じてもらいたいという思いでやっています」と繁彦さんは話す。

保育園と学びの場を運営することで気づいたことがある。

「私の娘に限らず、子どもは自然の中で遊んでいるといい感性を発揮する。ちょっとした季節の変化にも敏感になり、世界が広がっている。楽しくなることが結果的に学びになる。子どもたちの応用力、受容力はものすごいし、大人は先入観がありますが子どもは常にフラットです」(春香さん)。

横瀬町や地域住民とのコミュニティ形成も子どもに好影響を与えている。

ナゼラボの隣には横瀬町や地域商社が運営する官民交流施設があり、子どもたちも自然に大人と交流している。

今は月に1回、ナゼラボの庭で「コミュニティキッチン」というイベントを開き、野外の炊事場に大人と子どもが集まって食材を皆で分かち合い、ご飯をつくって食べている。

「今の時代、特に東京などの都市部は老人は老人、子どもは子どもとコミュニティが分断されることが多いですが、子どものうちからいろいろな大人と交流することが大きな力になります」(繁彦さん)。

博士号を活かして

舘野夫妻は、自分たちのように博士号を持った人々がもっと現場の教育に関わってほしいと願っている。

「いまドクターはなかなか大学のポストが空かず、いわゆるポスドク問題は深刻さを増しています。それであるなら、ぜひ子どもたちの探究学習に関わって子どもたちに学びの楽しさを伝えてほしい」(繁彦さん)。

自然の中で子どもたちが自発的に学べる場をつくろうとする舘野夫妻の挑戦は、まだ始まったばかりだ。

(舘野夫妻の経歴)
舘野繁彦(たての・しげひこ)1978年生まれ。川崎市出身。東京工業大学地球惑星科学専攻博士課程修了。東京工業大学地球惑星科学専攻特任助教、岡山大学惑星物質研究所特任准教授、東京工業大学地球生命研究所研究員を経て、埼玉県横瀬町で保育士に。博士(理学)

舘野春香 (たての・はるか)1984年生まれ。埼玉県横瀬町出身。東京工業大学地球惑星科学専攻博士課程中退後、海洋研究開発機構研究員。岡山大学惑星物質研究所助手、東京工業大学先導原子力研究所研究員、日本原子力研究開発機構研究員を経て、横瀬町で保育士に。博士(理学)

岩崎 貴行:ジャーナリスト・文筆家

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