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AI翻訳「ポケトーク」アメリカ市場を席巻の原動力 専用端末、セキュリティ重視で公的機関に浸透

東洋経済オンライン / 2024年10月18日 7時0分

現在、全米約1万4000学区の約5%にポケトークが導入されている。1学区あたり1000〜5000台規模の大型受注という。政府補助金の活用や、プライバシー保護法(FERPAやCOPPA)への準拠が、教育機関への導入を加速させている要因だ。

教育分野以外にも、ヘルスケア、ロジスティクス、公的機関など、多言語コミュニケーションニーズの高い分野で採用が進んでいる。これらの市場の潜在規模の大きさから、松田憲幸会長は「アメリカ事業は来年もしくは再来年には100億円の規模になっても全然不思議ではない」と述べている。

ポケトークアメリカ法人の業績も順調で、2024年2月に単月黒字化、同年1-6月期に半期黒字化を達成。9月時点で営業利益率17.8%を記録し、通期黒字化の見通しだ。

専用端末市場でのポケトークの優位性と、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせ戦略が、この成長を支えている。アメリカの言語アクセス政策の強化も追い風となり、今後さらなる成長が期待される。

翻訳専用端末はブルーオーシャン

AI翻訳市場は急速に成長しており、特にスマートフォンアプリの分野では大手テック企業を含む多数のプレイヤーが参入し、過当競争の様相を呈している。Google翻訳、Microsoft翻訳、DeepLなど、強力な競合がひしめく中、個々のアプリの差別化が困難になりつつある。

一方、専用ハードウェア市場に目を向けると、状況は大きく異なる。ポケトークの川竹一CTOによれば、AI翻訳に特化した専用デバイスは2〜3種類存在するものの、法人レベルのセキュリティ水準とMDM(モバイルデバイス管理)機能を備えた製品となると、選択肢はポケトークのみだという。この点が、ポケトークの市場での独自性を際立たせている。

松田会長は「彼らの弱みは逆にスマホが必要であること」と指摘する。スマートフォンアプリの翻訳サービスは個人利用では便利だが、ビジネスや公共サービスでの使用には制限がある。多くの企業や組織では、セキュリティリスクを考慮し、個人所有のスマートフォンを業務で使用することを制限している。

ポケトークは、これらの課題に対応するため、専用端末戦略を採用している。法人向けの高度なセキュリティ機能とMDM機能の実装により、ビジネスや公共サービス分野での需要に応えている。この戦略には複数の優位性がある。ハードウェアの開発・製造には多くの資本と技術が必要で、これが新規参入の障壁となっている。また、特定の用途に特化したニーズに対して、より適切なソリューションを提供できる点も大きな強みだ。

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