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「FIREで人手不足」論から抜け落ちている重大側面 より深刻なのは弱い需要による「日本経済の縮小」

東洋経済オンライン / 2024年10月18日 10時0分

FIRE(早期リタイア)願望を持つ人が増えている?(写真:kai / PIXTA)

依然として日本のインフレ率は高止まりしているが、ピークは過ぎた可能性が高い。

【グラフ】「人口動態」に代わって「人手不足」が検索されるようになった

筆者は景気ウォッチャー調査で「物価」「値上げ」「インフレ」に関連するコメントの数を集計しているが、緩やかに減少していた。また、足元の為替動向や原油価格の水準を考慮すると、来年の春から夏ごろにはインフレ率は2%を割り込む可能性が高い。

その頃には日銀の利上げサイクルは終了する可能性が高い。

もっとも、利上げ停止そのものより重要なのは、コロナ禍以降のインフレ局面が終わったときの世の中の「空気の変化」だろう。最近では、「人手不足によるインフレ」というテーマが定着し、それが前提となって議論が進んでいるようだが、この見方は修正される可能性がある。

「人手不足」=インフレ、「人口減少」=デフレ?

そもそも、「人手不足」という言葉にはバイアスがある。例えば、「人手不足」を「人口減少」と言い換えるだけでニュアンスが変わる。

「人手不足」という言葉は経済における供給力減少の面だけを説明しているためインフレが連想される一方、「人口減少」という言葉は需要減少のニュアンスも含んでおりニュートラルないしはデフレの印象を受ける人が多いだろう。

いずれも「下向きの人口動態」を示す言葉であるのだが、供給側だけをみるか、需要側も考慮するかでニュアンスは大きく変わる。

日銀は「人手不足」という言葉を用いてインフレ的なニュアンスを強調している。

内田眞一副総裁は5月27日の講演(いわゆるThis time is different講演)で「日本銀行は、2013年以降、QQE(注:量的質的緩和)やYCC(注:イールドカーブ・コントロール)などの政策によって経済に高圧をかけ続け、政府の諸施策と相俟って、女性やシニア層を中心に数百万人の雇用を創出し、雇用環境を人手不足の方向へ徐々に変えていきました」と成果を強調し、「人手不足」によるデフレ脱却の効果を強調した。

この講演では、人口減少による需要側の変化に関する言及はなかった。

植田和男総裁も9月24日の講演で、「労働市場の動向をみますと、人口動態も反映して追加的な労働供給の余地は限られてきており、構造的に人手不足感は高まりやすくなっています」と述べた。

植田総裁の講演の際には生産年齢人口と就業者数の過去データと今後の見通しが示され、いずれも2040年にかけて減少が見込まれるという説明となっていた。

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