「住宅ローン金利上昇」を騒ぐ人に欠けている視点 「報道されていない内容」を深読みすると…
東洋経済オンライン / 2024年10月19日 8時0分
そうなると、ニュースの影響範囲が決まってくる。今回の「17年ぶり」の利上げは、借りているほとんどの人が対象になる。その間、つねにあったローン控除の割合が0.7~1%の範囲内にある人が多く、借りている金利から0.15%上がるとはいえ、金利がローン控除割合を超えない人が多いと考えられる。超えたとしても、これまでのローン控除の累計額と相殺すればプラスの人が大多数だろう。
利上げによる住宅ローン返済額の変化
次に、返済額の変化に着目してみよう。金利が0.15%上がると、返済額は最大2.7%増える。しかし、2013年以降のマンションのインフレ率は年率6~13%だったので、すでに含み益は数十%ある人が多い。返済額の上昇幅より価格の上昇幅がつねに圧倒的に大きかったので、トータルの収支にはだいぶ余裕がある。
変動金利についてもう少し詳しく見てみよう。多くの銀行では変動金利が上がる際には、以下の3つのルールがある。
1:金利の見直しは「半年」に1度の単位で行われる
2:毎月の返済額は「5年間」は変わらない
3:毎月の返済額の増額は以前の「125%」を上限とする
1があるので、数カ月後に金利が見直されるが、5年間は返済額が変わらずに金利だけが増え、その分元本の減少が緩やかになる。「125%ルール」になるには金利が1.4%上がる必要があるが、今回の利上げ幅はその約10分の1にすぎない。
住宅ローンを借りるという「ゲーム」に勝つには
住宅ローンを借りることをゲームと想定して、戦略上大事なことを整理しておこう。次の5つは私がゲームに勝ちたいときに必ず使っている戦略構築の枠組みだ。
① 「ゲーム」のエッセンスを深く理解する
まず、住宅ローンはローン控除を含めると「超借り得」であることに変わりはない。金利が多少上がっても、不動産価格が下がることはない。一般論では、金利上昇は需要減退させ、価格の下げ要因になる。しかし、マンション価格は新築価格が牽引するもので、マンションデベロッパーの借入金利の上昇はコストプッシュになって新築価格に上乗せされるだけだからだ。
② 勝敗に至る「因果関係」を深く理解する
「金利は低く、期間は長く、借入額は多く」が原則で、これが最も得をする。金利が上がると繰り上げ返済を考える人が出てくるが、0.6%を繰り上げ返済しても0.6%で運用したことと同じ意味しかなく、効果は低いのでやらないほうがいい。それに、住宅ローン控除の期間内なら、返済したら損をすることになる。
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