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「仕方なく」家業を継いだ男性に起きた心境の変化 「うちの社員はすごい」大阪府八尾市の木村石鹸

東洋経済オンライン / 2024年10月20日 19時0分

親父が「うちの社員はすごいんやぞ」と繰り返し言っていたあのころから、いったいどれほどの月日が経ったでしょうか。

僕は今、僕自身が忌み嫌った家業をしています。

きっかけは2度にわたる「事業承継の失敗」です。

一時、親父は僕が継ぐのを諦めて、親族外の事業承継を試みました。しかし、うまくいきませんでした。あるベテラン社員は当時を「暗黒時代」と呼びます。

失敗を厳しく叱責し、何かあれば責任を取れと迫る。そんな経営スタイルに社員は疲弊して、「このままでは全員辞めます」と親父に直談判をしたそうです。

2度目は僕が紹介した人でした。化粧品会社の役員や管理部門を渡り歩いてきた方が、自分のキャリアの最後に、小さい同族会社や親族だけで経営しているような会社を、外部事業承継をしても継続していける会社にしたいとおっしゃっていて、これは渡りに船だと思い、親父と引き合わせたところ意気投合。

僕はその時、社長ではなく執行役員という立場でしたが、経営全般をお願いすることにしました。

しかしこれも2年で頓挫。新しい能力評価制度の導入で、何人かの社員が詰められて会社にいられなくなってしまったり、裏で親父や僕のことをこき下ろし、木村石鹸から追い出してしまおうと目論んでいたり、そんなことが発覚したのです。

2度の「事業承継の失敗」から、「もうこのまま放置しておけないな」と覚悟が決まりました。いや「覚悟が決まった」というより、「諦め」に近いでしょうか。「もう仕方ない」と、家業へ戻る決断をしました。

自分が紹介した人が、会社を混乱させてしまった責任もあります。絶対継がないと言い張っていたものの、大学卒業まで僕はずっと両親の世話になりっぱなしでした。それも木村石鹸という会社があったから、僕は何の不自由もなく、何の心配もなく過ごせていたわけです。

もう今いるITベンチャーのような気の置けない仲間との本当に楽しい時間はないのだろう。家業に戻ったら、仕事は仕事、プライベートはプライベート。しっかり線引きして、完全に「仕事」として割り切って取り組もう。信頼できる優秀なメンバーたちとの仕事はもうできないんだろう。そんなふうに諦めて家業に戻りました。

親父が繰り返して言う「うちの社員はすごいんやぞ」も、まったく信じていませんでした。今思えば、無知で恥知らずもいいところです。

嫌いだった家業を誇りに思うように

こうして僕は家業に戻り、親父の後を継いで、木村石鹸という老舗石鹸メーカーの代表に就任しました。

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