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終末期の母を「死なさずにすんだ」息子の冷静判断 「最期は家」を叶える前に考えたい治療の可能性

東洋経済オンライン / 2024年10月20日 11時30分

昨今、もしものときのために、自分が望む医療やケアについて考え、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する「人生会議(ACP:Advance Care Planning)」と呼ばれるアメリカ発の取り組みが、日本でも積極的に取り入れられるようになっています。

これには、最期をどこでどう過ごしたいか、延命治療や蘇生処置をどうするかといった、人生の最終段階についての本人の希望も含まれます。

終末期の患者さんの約7割が「意思決定が困難」ともいわれているだけに、終末期になる前に本人の意向や価値観について理解し、共有し合うことが大切とされています。

こうしたテーマは、「まだ先のこと」と後回しにしてしまいがちです。

しかし、誰もがいつか訪れるときに備えて、なるべく早い段階から、意思決定するための情報を集めておくのが、得策。特に延命治療の種類や意味は、早いうちから知っておいて損はありません。

いざというときになってから調べるのではなく、余裕があるうちに、何となくでも知識をつけておくことをお勧めします。

ACPを考えるうえで筆者が提案したいのが、「これだけはやってほしくない」という点を考えてみること。「こうしたい」という希望より、自分が「これは嫌だと思うことは何か」を考えるほうが、イメージしやすい人も多いのではないでしょうか。

例えば「意識がないまま、管につながれっぱなしなのは嫌」「治る見込みがないなら、病院に行きたくない」など、これをされると嫌だと思うことを伝えておくのです。もちろん、「こうしたい」というプラス方向から考えるのも手です。

ご自身の“取扱説明書”を作るように、自分がされたら嫌なこと、好きなこと、心地よいと感じることなどを、紙などに書き出してみましょう。家族と話せたら、お互いの価値観や考え方を知るきっかけにもなります。死ぬことを考えるというより、自分たちが今後の人生を、より幸せに過ごしていくために考えるイメージです。

無理に考えようとしなくてもOK

もちろん、「自分の最期について、どうしても考えたくない」という人もいます。

ある調査結果によれば、死の直前まで話し合いを控えることを希望する人は、全体の約20%、つまり5人に1人に当たります。実際、「自分の症状を知らないほうが幸せ」「今日死んでも後悔はない」というスタンスの人も、一定数いらっしゃいます。

「知りたくない」と考えるのも当然だと思います。ACPの普及に伴い、「自分の最期について知り、周囲と共有し合うのは当たり前」という流れもありますが、それによって本人がつらくなるなら、「考えない」「知ろうとしない」選択もあり。

医療者や介護者から「最期はどこで過ごしたいですか?」と聞かれたとき、無理して答えなくていいことも知っていてほしいですね。

今回お話ししたことは、いずれも最期まで自分らしく、人生を生き切るために大切なこと。年齢にかかわらず、なるべく元気なうちから考えていけば、きっとこの先の人生を考えるうえで大きな助けになるはずです。

(構成:ライター・松岡かすみ)

中村 明澄:向日葵クリニック院長 在宅医療専門医 緩和医療専門医 家庭医療専門医

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