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「大江戸温泉が高級化」いったい何が変わったのか 西日本を中心に展開する「湯快リゾート」と統合

東洋経済オンライン / 2024年10月20日 9時0分

「各施設で統一したメニューを提供したほうが、コストメリットが大きく、今まではその部分を重視してきた。だが、お客様が求めているのはその土地ならではのもの。我々の強みであるバイキングスタイルで食べても十分に満足いただける、ご当地メニューをしっかりと開発していきたい」(梅村氏)

さらに夕食時に高級アイスクリームのハーゲンダッツがバイキングの食べ放題メニューとして提供されていたのには驚いた。原価的に問題ないのかと思い尋ねると、「お客様1人当たりの原価に均すと、そこまでの金額にならない。スケールを生かした食材・飲料の仕入れをコントロールできているのも我々の強みだ」(梅村氏)という。

こうして見ると、食事に関しては何も言うべきことがないように思われるが、梅村氏は次のように話す。「我々がTAOYAで提供しているオールインクルーシブサービスは、未完成だ。海外の高級リゾートのオールインクルーシブサービスは、複数のレストランで何回でも食べられるし、プールサイドなどでカクテル等のドリンクもすべて自由に飲める」。

そのレベルのサービスに近づけるならば、相当に単価を上げる必要があると思うが、「TAOYAの施設数が現状よりも増えると(現状は6施設)、スケールメリットを生かした、より完成したサービスを提供できる可能性がある」とする。

課題もあるがコスパはいい

実は、筆者が大きな課題だと感じたのは、これに関連する部分である。大江戸の各ブランドは、スタンダードシリーズが「普段使いの宿」、Premiumシリーズはワンランク上のちょっとしたぜいたくが味わえる宿、そしてTAOYAは「ゆったりと、たおやかに。」をコンセプトとした、大人が特別な日に利用するようなホテルを目指している。

だが、実際にTAOYAに泊まると、子どもが走り回っていたりするのを見かける。梅村氏は「TAOYAは、他社の同じ水準のサービスを提供しているホテルと比べると、コスパよくご利用いただけると自負している。だが、価格を抑えている分、ブランドごとのお客様のご利用シーンの棲み分け等が、きちんとできておらず、目指すブランドイメージと現実にギャップが生じている部分がある」とし、「今後、ブランド戦略をブラッシュアップする必要性は感じている」という。

そして、「我々がベンチマークとすべきホテルチェーンはいくつかあるが、その中でブランド戦略が上手だと思うのが星野リゾートだ」と明かす。

星野リゾートは、若者をメインターゲットとするカジュアルホテルの「BEB(ベブ)」、都市型ホテルの「OMO(おも)」、温泉旅館の「界」、そして最上位ブランドの「星のや」と価格だけでなく、利用シーンごとのブランドの棲み分けをうまく行うなど、ブランド戦略に長けている。ただし、こうしたことをやるには、ブランド価値に見合ったスタッフの採用・育成なども不可欠であり、言うまでもなく一朝一夕にできることではない。

大江戸温泉物語は、さまざまな面でまだまだ伸び代があるブランドだと思う。しかし、間違いなく言えるのは、PremiumシリーズであれTAOYAであれ、現状、そこそこの値段で比較的満足度の高いサービスが受けられるという意味で、非常にコスパのいい宿だということだ。今後、どのようなブランドの方向性を目指すのか、企画・運営スタッフも頭を悩ませながら前へ進んでいる。

森川 天喜:旅行・鉄道ジャーナリスト

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